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キネマ旬報2018年10月下旬号 

 ひさしぶりにキネ旬メモ。10月下旬号。

 20代女優特集。わりと顔が好みの黒木華は、解説によると高校演劇ですでに頭角を現し、野田秀樹の舞台で役者デビュー。2014年公開の 山田洋次監督の『小さいおうち』でベルリン国際映画祭(→wiki )の最優秀主演女優賞受賞。『愛の渦』で注目を集めた門脇麦は白石和彌監督の若松孝二を扱った『止められるか、俺たちを』に出演するという。

 先日、YCAMで観た『きみの鳥はうたえる』に出演していた石橋静河(→wiki)もわりと好い。と思ったら、日本で昨年、いくつも賞を受賞した石井裕也監督・脚本の『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』で主役を演じてたのね(未見^^;)。そーか、原田美枝子の娘なのか。三宅唱監督がトークで話していたように、「低い声がいい」。
 アイドルグループの氾濫により、ある種の傾向のタレントが芸能界を占拠しているが、邦画の世界はちゃんとそれとは異なる価値観で女優を発見し、育てていることをあらためて実感。

「邦画はもうダメ」と半ば決めてかかってこれまで一部の話題作を除いてあまり観てこなかったが、食わず嫌いになっていたかも。ルックス、雰囲気、表情、発声のしっかりした俳優がちゃんと演技し、各スタッフがしっかりと自分の仕事を果たし、全体をしっかりとコントロールできる監督がちゃんと演出すれば、よくある題材やシンプルなストーリーでも魅力的な映画はできる。『きみの鳥はうたえる』の後、関係者のインタビューが載っていたので、20年ぶり?くらいに『映画芸術』を覗いてみた(買ったのでなく図書館でw)。アニメ排除、VFXもの排除、というのは、別にそれでいいと思う。わからないものはわかったふりをしない。オレらはオレらが守っていきたいものを育てていく、という方針は潔い。映画に限らず無限に増殖し続ける文化コンテンツのなかで、何を本気で愛し、何を選んで人びとに伝え、何を後世に残していくか、というのは、文化系メディア関係者が常に自分に問い続けなくてはならない問題意識だろう。つまりは、価値観の伝承だ。アウトサイダー(観光客)は、たまたま目についたものをつまみ食いして愉しむだけだ(自嘲w)。但し、観光には「異なる価値観を愉しむ」という側面がある。価値観の相対主義という点で、観光は極めてポストモダン的な行為だ。アウトサイダーを全く無視して自分たちの殻に閉じこもるとしたら、それは考えものだろう。

 ロブ・ライナー監督の『LBJ ケネディーの意思を継いだ男』の特集で、越智道雄がスコッチ・アイリッシュ的性格について語っている。本作でジョンソンを演じたのは、『スリー・ビルボード』(→ブログ)でウィロビー署長を演じたウディ・ハレルソン(→wiki)。LBJはユニテリオンだったのか。

 古賀太による第75回ヴェネチア国際映画祭(→wiki)レポートは読ませる。一部引用。
「世界のグローバル化に伴って、90年代から国際映画祭ではカンヌへの一極集中が進んだ。だがこの数年は、ヴェネチアの追いかけが目立つ。それは、アカデミー賞の前哨戦としての位置づけを明確にしたからだ」。なるほどねえ。そういえば、『立ち去った女』もヴェネチアのコンペ部門金獅子だった。
 コンペ作の傾向は「長い」「歴史モノ」が多い。金獅子賞はキュアロン『Roma』。脚本賞はコーエン兄弟のThe ballad of Buster Scruggs。長い映画ばかりのなか、塚本晋也の新作『斬、』は「その短さで抜きん出ていた」らしい。
 カザフスタン映画が注目を集めているようで、オリゾンティ部門で監督賞を受賞したのはエミール・バイガジン(→wiki: Emir Baigazin)の『Ozen(川)』。脚本賞はティメー・クンデン『オールド・ドッグ』)を監督したペマ・ツェテンのJinpa。



VR部門」もあって、作品賞はエリザ・マクニット(Eliza McNitt)の"Spheres"。VR体験賞(インタラクティブ系)はチャク・チャエ(Chuck Chae)の"Buddy VR"、VRストーリー賞はバンジャマン・ヌエル(Benjamin Nuel)の"L'ile des Morts(死の島)"。


SPHERES: Chorus of the Cosmos Trailer from Eliza McNitt on Vimeo.

 ほかの国際映画祭について「ベルリンは、来年から長年ロカルノを率いたスイス人のカルロ・カトリアンがトップになる。ロカルノは、フランスのベルフォール映画祭のディレクターだった女性、リリ・アンスタンが引き継ぐ。トロントは、1994年から関わってヴェネチアを脅かすまでに育てたピアーズ・ハンドリングが引退した」という。

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映画『クリーン、シェーブン』 

 小倉昭和館でおこなわれたカナザワ映画祭2018で、ロッジ・ケイガン監督(→wiki: Lodge Kerrigan)の映画『クリーン、シェーブン』(1993/アメリカ/79分)を観る。

 あらすじとしては、精神科医院を退院したスキゾフレニアの主人公が、引き離された幼い娘に会うため故郷に戻ってくるが、幻覚や幻聴、強迫観念に襲われて病んでいく。いっぽう、近所では幼女の遺体が発見され……というもの。



 車の窓ガラスを新聞紙で覆い、バックミラーをテープで隠そうとするふるまい、血まみれになるまでカミソリで体毛を剃る様子、急襲する送電線のイメージ、魚をさばく女、何か仕掛けられたと思って引き剥がす爪。

 幻覚症状を描いた映画としては、コンラッド・ルークスの『チャパクア』(→ブログ)や『ジェイコブズ・ラダー』の系譜と言えようか。『ラスベガスをやっつけろ』とかも入るかな? 昨今はPOV(一人称視点)ホラーと言えば『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『パラノーマル・アクティヴィティ』を思い浮かべるが、これもその一つにあげられようか。

 ミュジック・コンクレートを意識したサウンドデザインが秀逸。フィールド録音した音を使って、周囲のかすかな音まで過敏に感じ取る主人公の症状をよく表現している。

 『パルプ・フィクション』や『マスク』、『ユージュアル・サスペクツ』などに出演したピーター・グリーンが主演。