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ナショナルジオグラフィック2020年1月号 

 ナショジオ2020年1月号は総力特集「健康に生きる」。

 痛みを和らげる科学
 米国では90年代末から慢性痛の軽減にオピオイド系鎮痛剤が処方されるようになった。2017年時点でオピオイド処方をきっかけに薬物依存症になったアメリカ人は170万人と推定される。フィラデルフィア在の男性が交通事故をきっかけにパーコセットを処方され、後に主治医が変わり、新しい医師がオピオイド系鎮痛剤の処方を拒絶したため売人に頼るようになり、より安いヘロインに手を出すようになったというレポートが生なましい。

 痛覚は人が身を守るうえで欠かせない警報装置で、その見張り役を務めるのは「侵害受容器」(→痛みと沈痛/構造と機能/1次侵害受容ニューロンー侵害受容器/侵害受容線維)。背骨の近くにあり、その神経線維は皮膚や臓器などさまざまな部位に延びている。侵害受容器には切り傷や熱傷など異なる有害な刺激を察知し、脊髄に電気信号を送り他のニューロンを通じて脳に伝えられ、大脳皮質で処理され痛みとして知覚される。脳はそれに対処しようとエンドルフィンなど「内因性オピオイド」を放出。痛みの信号を抑制する。
 ハーバード大学医学部のクリフォード・ウルフ(Clifford Woolf )によると、皮膚が傷ついた直後は痛みの伝達システムが過敏になりキズが完治した後でも当システムが勝手に興奮したり過敏状態が継続したりする「中枢感作」が生じて神経障害性疼痛、繊維筋痛症、過敏性腸症になるケースがある。
 傷と痛みの複雑な関係を探るオックスフォードのアイリーン・トレーシーによると脳には単一の痛み中枢があるわけではなく、感情、認知、記憶、意思決定に関わる領域などが痛み刺激に反応するし、同じ刺激がいつも同じパタンを引き起こすわけでもない。恐怖・不安・悲哀が痛みを悪化させうる。
 SCN9A遺伝子に変異があると痛覚過敏を引き起こすことがわかっており、Nav1.7チャネルの開閉により痛み信号の流れを制御できるという発見はオピオイドに代わる依存性のない鎮痛剤開発に道を拓いた。ほかにもイモガイの毒を用いて慢性疼痛に効く薬を開発する動きもある。なお、オピオイドの薬理作用については日本緩和医療学会/オピオイドも参考になる。

 一方、投薬以外の痛み緩和法も研究が進んでいる。
 脳深部刺激療法(DBS)で脳の感情処理中枢領域に1秒間に200回の微弱な電気刺激を与えることで痛みについてまわる不快感、恐怖、不安をやわらげる試みが始まっている。慢性疼痛患者は、たえず襲ってくる痛みに条件づけられた状態となりあらゆる刺激を痛みとして受けている。ほかにもVRによる娯楽が痛みの軽減に重要な役割を果たすという研究もおこなわれている。

 長寿の食卓をめぐる旅
 ダン・ビュートナーによるブルーゾーン(健康な高齢者が多い地域)の長寿者へのインタビュー。イタリアのサルディーニャ島や中米コスタリカのニコヤ半島(ガショ・ピントとトルティーリャ)、沖縄、カリフォルニア州ロマリンダの例を取り上げている。疫学者ジャンニ・ペス曰く、百寿者の消化器官には食物繊維を通常より高いレベルの奇数鎖脂肪酸(→wiki:脂肪酸 )に変える細菌が多くいるという。

 人体にすむ微生物たち
 体内の微生物は腸脳軸(→wiki:Gut-brain_axis)という化学的伝達経路を通じて脳とコミュニケーションをとり身体機能を調節する。たとえばセロトニンを多く貯蔵するクロム親和性細胞(→wiki)を刺激して脳に信号を送る。ふーむ、便移植がフツーにおこなわれる時代が到来しつつある様子がうかがえる。

 ロボットとお年寄り
 医療・介護関係のソフトはベルギーのゾラ・ボッツ(Zora Bots)。nao。日本の地方ではロボットの介護施設への導入は、全然進んでないように見受けられるが、10年くらいたてば変わるかな・・・。

 ほかにも、「女性の健康と幸福」やヨガを扱う「安らぎを求めて」など。

 慢性疼痛についてはナショジサイト:愛知医科大学 慢性的な痛み 牛田享宏にも解説あり。



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週刊東洋経済8/24号 

 週刊東洋経済8/24は特集が「すごいベンチャー100」。

 ベンチャーの資金調達は2014年以降、うなぎのぼりらしい。CVCの額も上昇。それでもベンチャー投資額の国際比較で、日本は圧倒的に低い。

 小銭のある高齢者は子育てゲームみたいなものとみて、自分の仕事に関係するなら実際に(サービスなど)使用してみるとかして気に入った/将来性のありそうなベンチャーを見つけ出し、(たとえ少額でも)投資してみるのもいい。ヒマつぶしとしても、ソシャゲーにハマったり、メディアのウヨサヨバトルに時間を浪費したりするより遥かに生産的だ。

 一方で環境保全、省エネについては市場任せにせず、ガイドラインや意識づくりなど大きな枠組みが必要。たとえば過剰包装やペットボトルの削減など。モッタイナイ運動は、経済成長を阻害するという理由で抹殺されたのだろうか。だとしたら見当違いも甚だしい。
 ざっとみて、関心を引いたベンチャーを整理しておく。

【モビリティ関連】
ティアフォーはオープンソースの自動運転用OS「オートウェア(Autoware)」を無償公開して技術の民主化を図る。収入源は自動運転開発のノウハウもたない企業へのコンサルティング。保険事業、事故確率を低くする仕組みの提供について大手損保と提携。トヨタが参加する未来創生ファンドが出資。
Luupは電動キックボードのシェアサービス。複数の自治体と連携協定を結び安全性検証の実証実験を重ねている。
Glafit(グラフィット)は折り畳み電動バイクを開発。

 【業務支援系】
SmartHRは人事・労務のクラウドサービス。
スタディスト(studist)は、従業員向け導入教育マニュアル作成・共有サービス「ティーチミー・ビズ」。外国人従業員増加が追い風。
atama plusは学習支援関連、パーソナライズ教材。テスト解答の内容、所要時間学習履歴をベースにパーソナライズした学習プランを組み立てる。
TableCheckはオンライン飲食店予約サービス。たしか、これは以前、使ったことあるなあ。今後は退店時の会計レスをはかる自動精算の仕組みも導入。
REARSはフードロスの問題を解決したいという社会起業。飲食店の余剰食材を個人にシェアするフードパスポート(月額980円)。頑張って欲しい。
コネクテッドロボティクスはソフトクリームやたこ焼きなどの調理ロボット。セブン&アイのファストフード業態「ポッポ」にも納入。
キャディは板金加工品の価格・納期の見積もりを算出。創業から1年半で提携先の町工場は約150社。

【IoT】
Ideinはエッジデバイスの管理サービス「Actcast」など。
ウフル(uhuru)は名前の響きがいいな。IoTの開発・運用サービス「エネブラー」で注目され、三菱重工の風力発電にも導入。サウジのスマート未来都市「ネオム」にも売り込みかける。社長は園田崇。

【その他】
「キャンセル」は宿泊予約の権利を個人同士で売買できるようにするサービス。うーん、検索対策どうするんだろw。全国で2700の宿泊施設と契約。
(CEOは松村大貴)は、宿泊施設の料金設定業務を効率化する「マジックプライス」を展開。
スタートバーン(sartbahn)は、アートの評価・流通インフラを構築。今年10月から来歴や真贋鑑定結果など作品の価値・信用に関わる情報をブロックチェーンに記録するアートブロックチェーンネットワーク(ABN)を本格開始。
ベースフードは完全栄養の麺とパンを販売。米国での現地生産・販売の準備も。
プレースホルダは次世代型テーマパーク「リトルプラネット」を関東中心に展開。マリノアシティ福岡にもあるようだ。アトラクション施設のリニューアルは重要。
・変わり種としてはムスカ。イエバエを使って家畜の糞などを飼料・肥料を作る。

 ベンチャーの生態系(機関投資家や個人投資家、ベンチャーキャピタル、ベンチャー)を説明するページもあった。日本のベンチャーの生態系、足りていないのは何か?(JBpress2018.9.25)。福岡市はスタートアップ支援を積極的に行っている。

 大企業「自前ファンド」CVC。日立が3MのCVC組織を立ち上げた専門家を招聘してを設立。CVC本社をミュンヘンに。ソニーはSIF(ソニーイノベーションファンド)のほかにこの度、大和証券と成長期・安定期に入った入ったベンチャーを投資対象にするIGV(イノベーショングロースベンチャー)を立ち上げる。

「大物ベンチャーの現在地」。企業価値1000億円超のユニコーンはPFN、鈴木健のスマートニュース、暗号資産リキッドルームの3社。クモの糸Spiberも900億近い。

「仮想通貨ベンチャーのその後」みたいな記事は健全。まぁ、仮想通貨バブルは私ごときでもあらかじめわかってたけどね。ぜひ今回掲載のベンチャーの3年後、5年後とかも追いかけて欲しいなあ。個人的にも上に拾ったベンチャーがどうなるか、(忘れてなければw)チェックしよう。

週刊東洋経済6/29号  

 ニュース最前線では官製ファンドINCJと日の丸液晶JDI混迷問題のほか、イラン経済崩壊懸念の話など。ロウハニ大統領は、中国が軍事プレゼンス強化を念頭に建設を進めるパキスタン・グワダル港に対抗するチャバハール港開発(インド主導)に日本の協力を得たい考えとのこと。佐藤優の「知の技法 出世の作法」(p118)では、安倍総理のイラン訪問(→ブログ)について「ハネメイ師に直接、トランプ大統領の意向を伝えることができただけで(中略)米・イラン間の緊張緩和に向けて大きな役割を果たすことができた」とみている。

 特集の「沸騰!再開発バトル」では東京、横浜のほか札幌、名古屋、大阪、福岡でも活況の都市再開発を取り上げる。全国市街地再開発協会というのがあるのか。渋谷駅周辺では東急不動産の新ビルが続々竣工、日本橋では三井不動産が場を提供してライフサイエンス拠点を整備中。

 個人的には、(株価にせよ地価にせよオフィス需要にせよ)オリンピックの後にどーんと急落する、と予想していた(→ブログ:文藝春秋2015年9月号)が、特集記事を担当する一井純によると「21年や22年に竣工するビルにも、続々とテナントが内定している。にぎわいが途絶えることはしばらくなさそうだ」。消費税増税もあるし、どうなんだろうね。

 ほかにはウィーワークの話。このあたりの不動産テックの話は『不動産テック 巨大産業の破壊者たち』で読んだが、なかなか面白い。地方在住者にはまだ縁が薄いが^^;、動向として知っておいて損はない。ただ、ウィーワークみたいなのは一時的な流行に終わりそうな気がするんだが…。
 最近、「都市計画」的な話に目覚めてきたので、全解剖「再開発の仕組み」などは、アウトサイダーにとって勉強になる。

 いまやITやAIというくくりでは漠然としすぎてIT×教育、IT×不動産、IT×土木、IT×食、IT×アパレルみたいに、業界毎に語られる時代になっている。

 福岡で進む「歴史的再開発ラッシュ」関連はなかなか網羅的かつ短くまとまっている。西鉄は本社のあった福岡ビルと天神コア、天神ビブレを一体開発し24年春までに高さ96mのビルに建て替えを予定。港湾部では「ウォーターフロントネクスト」。JR博多駅では「博多駅空中都市構想」。ただし、筑紫口側の開発はこれから検討。
 ブログ:熊本駅で見たように、九州ではほかの都市でもJR駅前の再開発が進んでいる。背景には少子高齢化に伴う高齢者の公共交通回帰やアジアからの観光客増加への期待、若者の自動車離れなどがあるのだろう。

 景気の良い話だけでなく、「再開発に潜む影」と題して日本橋高島屋再開発の舞台裏にある「借地権者水増し」手口や、町井久之(→wiki)のTSKビルの跡地利権に関しても触れている点が、いまの『東洋経済』の良いところ。p90~では「欠席が多い社外役員100人」なんて特集もやってる。今後も企業の提灯記事ではなく、ジャーナリズムの基本を忘れない記事づくりに徹して欲しいものだ。

 第2特集は2020年度必修化が迫るなか、過熱!プログラミング教室。子ども向けプログラミング教室の市場規模は今年114億円→24年に257億円にまで拡大見通し。スクラッチなどを使う小学生向けのプログラミング教室は経験者でなくても始められるが、中高生向けは容易ではないため講師不足が(特に地方で)深刻化しそうだという。NPO法人 みんなのコードも登場。プログラミングはネット上でできるe-ラーニングが普及しているとはいえ、子どもたちが理解を深めるには、人的サポートが必要不可欠だろう。

 グローバルアイでは、オリビエ・ブランシャール(→wiki)による「欧州の財政規律は厳しすぎる」。
『破綻するアメリカ』(→ブログ)の著者、会田弘継が「リフォーモコン」について語っている。これは『破綻するアメリカ』にも登場したNYタイムズの保守派コラムニスト、デイヴィッド・ブルックスらが支援する改革派保守。彼らは大統領候補としてマルコ・ルビオやジェフ・ブッシュを推していたが、トランプ大統領就任によって消散したわけではない。移民政策や自由貿易で相容れないトランプに歩み寄りつつ、「労働の尊厳を基礎とする経済」を主張する一方、新しいアメリカのナショナリズムを打ち出している。

 九大の都市研究センター長、馬奈木俊介による「経済学者が読み解く 現代社会のリアル」第23回。今回は自動運転導入の追加費用がいくらなら許容できるかという話。自動運転普及が自動化に伴う事故リスク・運転疲労軽減によって自動車利用の増加を招き、エネルギー消費が拡大する懸念ありと言う。環境意識の向上が課題だな。

「編集部から」でも少し触れていた、地権者の権利調整に代表される中国のアドバンテージ。中国はいま、トランプ・アメリカとの経済戦争や香港の大規模デモによって旗色が悪くなっているが、一党独裁・全体主義のアドバンテージが揺らぐ気配はない。
 いわゆる「右傾化する欧米日本」というのは、経済的にも軍事的にも超大国となった中国の「国営資本主義/全体主義」の手口を模倣しようとする動きにみえてしまう。歴史的にみると、ロシア革命後に著しい経済成長を遂げたソ連に対し、大恐慌後のドイツは、ナチが政権を掌握してスターリンの全体主義に倣った国家社会主義的政策を掲げた。自由主義を掲げる資本主義の総本山、アメリカでさえ、大恐慌後は共産主義に影響を受けたニューディーラーが台頭した。日本でも同様に、革新官僚(→wiki)が台頭した。
 90年代の日米貿易摩擦では、日本の「異質性」を指摘する声が強かったように記憶する。その「異質性」はある意味、現在の中国に対して欧米が覚える「異質性」と似ている点が少なくない。ただ、当時の日本は欧米の意見を取り入れて、いくつかの産業政策を是正したし、「日本一強」との批判をかわすために、中国や韓国の経済発展を後押しした経緯もある。
 当時の日本と現在の中国の置かれた状況の大きな相違点は、第一に安全保障の問題が絡むという点だ。(80年代にも、日本の産業スパイ疑獄やココム事件があったが)。もうひとつ、状況の相違という点では、欧米メディアにおける「文化多元主義」を含む「政治的正しさ」の普及状況が大きく異なる。
 久しぶりに購入した『現代思想』で、スティーブ・バノン(*)も愛読したと言われる(?)ニック・ランド(→wiki)の『暗黒啓蒙』(抄訳)に目を通したが、ランドは「政治的正しさ」が横溢する「現代のメディアとアカデミズムの複合体」を、メンシウス・モルドバーグ(→wiki:Curtis_Yarvin)にならって、「大聖堂(カテドラル)」と呼んでいる。
 現在のいわゆる「リベラル」(≒大聖堂?)の問題点は、じゅうぶんに経済発展を遂げた中国や韓国の経済ナショナリズムから目を背け、欧米日本の「右傾化」傾向のみを糾弾しているように見えてしまうところだ。
 民主化・自由化・法治主義・人権状況・ナショナリズムのレベルを中国や韓国、北朝鮮、欧米、日本でしっかりと比較してみせることが重要だ。叩き台としてつくった「比較表」をもとに議論や交渉をしたほうが建設的だと思われる。もちろんこれは、中国や韓国に比較してマシだったら何でもやってOKだという意味ではない。

 リベラルは自分たちの理想との比較で日本政府を格付けし、一般人はリアルな近隣国との比較で格付けする。このままだとますます「リベラル」離れが進むことだろう。

 文中敬称略。



(*)たまたま王岐山のwikiを覗いていたら、2017年にスティーブ・バノンと会談してたみたい。

 文中敬称略。