新建築2017年9月号 

〇ニュース:第58回BCS賞。本賞を受賞した15件のなかには、新宿東宝ビルや東京駅八重洲口再開発、TOTOミュージアム(近いのに未だ行ってない)、としまエコミューゼタウン(→wiki)、虎ノ門ヒルズ、三分一博志の直島ホール等の名前が並んでいる。

〇BOOKSコーナーでは『ユートピア都市の書法』(小澤京子 著)。クロード=ニコラ・ルドゥーは昔、澁澤龍彦の紹介で知って以来のファンで、以前、旅行のついでに列車を乗り継いでアル=ケ=スナンの王立製塩所(→公式サイト)まで行ったが、デジカメで撮った画像データの入ったメディアが盗難にあって落ち込んだものだ^^;。

〇建築論壇では、以前ゲンロンカフェ(→ブログ)にも登壇していた石川初。造園学者の進士五十八が述べる造園の原則――用と景のバランス――を引いて、ランドスケープデザインの役割の変遷を「用と景の葛藤史」と表す。都市の植物を観察するポイントは、施設として制度が植えた街路樹・植栽と住民や施設就業者が楽しみで植えた「園芸」と、勝手に生えてきた「雑草」を見分けること。行政が設定した標準に沿って植えられた街路樹などは、涼しかった時代のスペックのままで、亜熱帯化した現在の気候と噛み合っていないのに対し、日々チューニングされる「園芸」はずっと先を行っており、アルカリ質で日当たりのよいビルの屋上やベランダでは、オリーブやハーブなど地中海的な植生と化している。
 ハイライン(→wiki)は、ジェームズ・コーナー(ランドスケープ・デザイン)とディラー・スコフィディオ(建築家)。植栽デザインはオランダの造園家ピエト・アウドロフが手掛けたが、廃線として放置された間に生えてきた雑草を調査し、同じような種類の植物を用いて植栽され「ハイライン・ネイティブ」と呼ばれている。宮城俊作(→wiki)はかつて、野性的な「一次自然」、人工的な「二次自然」に対し、野性と人工がレイヤーとして重なり、ある種の緊張を持った風景「三次自然」に今後はなっていくと述べたが、維持管理や関わり方と空間のレイアウトをどう結び付けるか、時間をかけてチューニングしていくことで、より好ましいランドスケープができる、と結ぶ。

〇SANAAが手掛けた米国コネティカット州ニュー・ケイナンのグレイス・ファームズ(NYから車で1.5時間)


〇石上純也のオランダ北部Vijversburg公園ビジター・センター。天井高2.3~3.3メートル。「高さ、幅、曲率の異なる透明のガラス壁が構造体として建物を支える」という。構造家・佐藤淳とともに、ガラスのエッジに均等に応力を負担させることに注力した。

〇隈研吾のポートランド日本庭園/カルチュラル・ヴィレッジ。
 スティーブ・ジョブスが若い頃過ごし(リードカレッジに通学)、ガス・ヴァン・サントが映画を撮り続けたポートランドは、いまやアメリカで最も住みたい都市のトップにランキングされている。日本生まれで現地に住む内山貞文。石積みは500年の歴史をもつ穴太衆(→wiki)と地元の庭師の協働。

〇益田市のグラントワや各地のとらやを手掛けた内藤廣(→wiki)による富山県立美術館。

〇くまもとアートポリスの伊東豊雄と坂茂による熊本大地震復興・仮設住宅整備の取り組みについても記事があった。

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新建築2017年6月号 

 新建築6月号は夏の旅行シーズンに向けて?旅心をくすぐる建築物が勢ぞろい。

 坂茂が設計したラ・セーヌ・ミュジカルを14ページにわたって特集。球体のアトリウム(スプルース集成材による木架構)の周りに、太陽の位置に従って回転し、効率的に遮光・発電するソーラーパネルを取り付けている。内部のコンサート会場も数パタンの音響波打合板の壁面や、複数種類の紙管をハニカム状に配した天井が特徴的。坂茂本人による現地ゼネコンとの格闘の報告が凄まじい。
 ジャン・ヌーヴェルがマスタープランを手掛けたパリ郊外・セガン島に建ち今年4月にオープン。パリ観光の新しい目玉になりそうだ。



 デンマーク・コペンハーゲン郊外のKastrupにある美術館にできたCISTERNERNE PAVILION「the Water」は三分一博志の設計。
 日本から持ち込んだスギ・ヒノキを屋根材に用いた地下空間の廻廊。石と木と水の地下神殿といった風情。会期は2017.3.21-2018.2.2。



 SANAAによる直島港ターミナル「まる」(宮浦港ではなく本村港)は薄いFRPの球体をランダムに積み重ねた入道雲のような待合室。たしか豊島までの便も出ている。以前旅行したとき(→ブログ)は何もなくて分かりにくかったからGood Job。瀬戸内国際芸術祭の年ではないが、豊島美術館はむしろセトゲイ会期外に訪れる方が混まなくて良いだろう。

 南方熊楠記念館新館。和歌山県の白浜温泉の近くに立ち、本館再開とともにオープンしたらしい。設計は小嶋一浩と赤松佳珠子/CAt。施工は東宝建設・第一テック。

 東京銀座6丁目の中央通りと三原通りの間、10番街区と11番街区を一体的に整備した9080平米の敷地に立つGinza Six。外装デザインを手掛けたのは谷口建築設計研究所。ステンレス・ヘアライン仕上げの「ひさし」が特徴的。施工は鹿島建設。屋上庭園もあり。

 ほかにもフォーシーズンズホテル京都豊中市立文化芸術センター大分県竹田市立図書館などを紹介。

 どう見ても今月号は建築観光ガイドやろw。

 NEWSでは、川崎市のキングスカイフロント地区(国際戦略特区)に東急ホテルズが「水素ホテル」を出店するらしい(2018春予定)。改正都市公園法が成立し、都市公園内で民間業者がカフェ・レストラン、保育所を設置することが容易になるようだ。



a+u 2017:05~米国の若手建築家 

 a+u 2017:05 は、平野利樹(高松伸研究室→プリンストン→隈研吾研究室)が"キュレーション"する「米国の若手建築家」特集。取り上げた6組の建築家に見られる傾向を以下の3つにまとめて紹介。
新コラージュ主義
新しいアニミズム
物理空間と情報空間の相互作用
 そこには、10+1 201612 (奇妙で不可解な)オブジェクトへの回帰によって建築に紹介されたグレアム・ハーマンらのOOO(オブジェクト指向存在論)の影響が感じられるという。

 ① 新コラージュ主義は、マーク・フォスター・ゲージやアンドリュー・コバック(→wiki:Andrew Kovacs)、ヒメネス・ライ(Bureau Spectacular)等に見られる傾向。
 1970~80年代のポストモダニズムに見られたコラージュに近いが、ポモではコラージュされる要素に意味が込められたのに対し、「新コラージュ主義では、それぞれの要素は建築の機能との関係性や特定の意味に還元されないオブジェクトとして扱われている」。

 M.F.ゲージ(→wiki:Mark Foster Gage)はキットバッシング (kit-bashing)という手法で高解像度の豊富な形態ヴァリエーションを実現する。経歴としては、ノートルダム大学で古典建築を学んだ後、イエール大学の修士課程に進み、グレッグ・リン(→wiki:Greg Lynn)やフランク・ゲーリーらとともにスタジオを指導。
 ゲージは昨年、デヴィッド・ルイ(David Ruy)やトム・ウィスコム(→wiki:Tom Wiscombe)、su11のフェルダ・コラタン(Ferda Kolatan)、後述のマイケル・ヤング(Michael Young)ら建築家のほか、ジャック・ランシエールやグレアム・ハーマン(→wiki)、ティモシー・モートン(Timothy Morton, 1968~)、"The Body in Pain"のエレイン・スカリー(→wiki:Elaine Scarry)といった哲学者や"ステージド・フォト"の代表作家グレゴリー・クリュードソン(→wiki:Gregory Crewdson)等をイエールに招いて、美学の行動主義(Aethetic Activism)と題したシンポジウムを開催。また、亡くなったザハ・ハディドのパートナー、パラメトリシズムのパトリック・シューマッハ (→wiki:Patrik Schumacher,→太田佳代子×藤村龍至×東浩紀@ゲンロンカフェ)とも議論を重ねている。
 ゲージは言う。「グーグルによって誰もがすべてを知っているこの世界で、唯一残された価値のあるものとは謎だと考えています。建築はそういった謎をもっとも濃密に作ることができる数少ない場所の一つなのです」。



 ヒメネス・ライ(Jimenez Lai)は台湾生まれ。ドラえもんやドラゴンボールに夢中だった少年時代にカナダに移住し、トロント大学で美術史を専攻した後、建築学部の大学院に進む。NYのOMAに勤務中、A.コバックに出会う。MOMAが「ホワイト・エレファント」を収蔵。彼はマイケル・メレディス、A.コバックとのチャットによる鼎談で、Mess is More、僕たちの作品はすべてこれで説明できる、と語る。3人曰く「米国では、ヨーロッパや日本に比べて若手に実作の機会がない」。

 ② 新しいアニミズムは、ヤング&アヤタのBase Flowers(テトラポットの生命的展開?)やLADG(Los Angeles Design Group)の48 character(サエボーグっぽいなー)、エリー・アブロンズの作品にみられる生命感のあるモノ。

 ヤング&アヤタ(→YOUNG & AYATA)はマイケル・ヤングとクータン・アヤタ(Kutan Ayata)が建築とアーバニズムの概念的、美学的可能性を探求するために2008年にNYで結んだパートナーシップ。

LADGはアンドリュー・ホルダー(Andrew Holder)とクラウス・ベンジャミン・フラインガー(Claus Benjamin Freyinger)が2004年に創設した建築デザイングループ。ホルダーは学部時代は政治学を学び、不動産金融の仕事に就いていた。フラインガーは美術史で博士号を取得し、ヴェネチアのグゲンハイム財団に勤務した後、UCLAへ。

 エリー・アブロンズ(→Ellie Abrons)はニューヨーク大学で美術史を専攻した後、ファッションとグラフィックの業界で5年間勤めた。T+E+A+Mのメンバーとして、2016年ヴェネツィア建築ビエンナーレのアメリカ館でDetroit Reassembly Plantを展示。

 A.ホルダーもアブロンズもゼロ年代にシルビア・ラビン(→wiki:Sylvia Lavin)がチェアパーソンを務めるUCLA建築学部の大学院で学び、グレッグ・リンらの影響を受けている。

 ③の例としては、アブロンズの「Another Rock」を取りあげている。