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WIREDメモ2019年7月 

 一年半くらい?興味が衰えていたwired的なものへの関心が多少、蘇ってきたので、いくつかメモしておこう。といっても雑誌の方じゃなくウェブの方ねw。月イチでクリップする習慣を身につけておきたいが、どうなることやらw。

 「学習行動」はRNAを介して子孫に遺伝する:線虫の研究から明らかに(2019.7.5)は、「学習の遺伝」について以前から関心があったので嬉しい限り。関連記事リンクでいくつかほかの記事も辿れる。但し、研究結果が人間にも当てはまるかどうかは「いまだにわからない」。

 グーグルが計画中の未来都市「IDEA」(2019.7.5)は、アルファベット(グーグルの親会社)傘下のSidewalk Labsが、カナダのトロントで進めるスマートシティプロジェクト。うまくいってない的な話を小耳にはさんだが、その現状報告。想像通り「個人情報保護」の問題。中国であればクリアできそうだが、「Don't be Evil」をモットーとするグーグルがさっさとトロントを諦めて中国で進めるかと言えば、東西冷戦が蘇ってきたかにみえるこのご時世、それもなさそう(中国政府としてはWelcomeだろうがw)。
 ただ、トロントでの試みは、将来的に世界各地で建設が進むであろう「スマートシティ」を西側の法治国家で実装するうえでの重要課題が整理される良い機会だ。人権保護や法治主義に厳格な西側諸国のハンディキャップが浮き彫りにされるかどうか。そういえば、アクシス6月号 (特集:変容する都市)では、フォスター&パートナーズがマスタープランを作成するインドのアマラーヴァティ(→wiki)や、ステファノ・ボエリ(→wiki:Stefano Boeriが手掛ける柳州など、世界各地で計画/推進されるスマートシティ例が載っていた。


 データベースの「生命的自律」という、未来イメージを誘発するキャップコピーに惹かれて読んだ岡瑞起×オラクル竹爪慎治 対談(2019.5.30)はOracle Autonomous Databaseのプロモ記事。こういうプロモ記事は悪くない。岡瑞起は、存在は気になっていたがまだ買ってなかった『作って動かすALife』の著者の一人。最近少しPython学習してるし、オラクルのDBは買えないがw、こっちは買おうかな?⇒買っちゃった!

 ケヴィン・ケリーによるミラーワールド(鏡像世界)は、デジタルツインの延長上にある概念だろうか。「ウェブ、SNSに続く来るべき第3のグローバルプラットフォーム」という見立てで、『WIRED』日本版Vol.33はこれを特集している。



 アマゾンの現場で起きる労働問題(7.26)は、工場の無人化を考える人には重要。

 「ラディカル」が自由な民主主義を更新する(7.20)は、ジェイミー・バートレットの新作『ラディカルズ』の紹介。バートレットは最近になって『闇ネットの住人たち』を読んだところなのでタイミング良し。中道(左派)の急落/崩壊は、「パソキフィケーション」というらしい。発音しにくいので日本では普及しないだろうなw

 「スマートキッチン・サミット・ジャパン 2019」に注目すべき理由(7.25)は、フードテックがらみ。食の問題は、食のサプライチェーン、つまりキッチンだけでなく農業や酪農、水産業、さらには賞味期限や食品残渣などの問題と切り離すことができない。食の安全保障の話にもつなげたらよかったのにね。

 人の表情を読む「医療用スマートグラス」(7.25)。発達障害や自閉症スペクトラムと心の理論(→wiki)の関係は、よく指摘されるところ。重要なのは初対面の相手の表情より、頻繁に会う仕事関係者なので、機械学習の効果も期待できる。うまく作られれば、忙しいとついつい他人の表情を伺うことも怠りがち、という人にも役立ちそう。ただ、日本人の場合、表情にあまり出さない人が多い。2重チェックのために声調からも診断できればいいが、装備が大変になるかな。眼鏡の下のところに「コイツちょっと怒ってるかもよ」とか表示されるだけでも役立つって人は少なくないのではw。価格次第だけど、スマートグラスのオプション機能として良いかも。

 ある写真家が夢想したポストヒューマンな未来は、トランスヒューマニズムネタ。

 インターネットが地球規模で浸透する時代、もはや「不平等」からは目を背けられなくなる(7.25)で注目したのは、インドのNPO、Digital Empowerment Foundation。日本でも、貧しい人や障碍者へのパソコン/ネット教育サービスは、市民活動としていろいろおこなわれている。ただ、イデオロギー色を嫌う人は多いので、幹部スタッフは(表向きだけでも)口は慎んだ方がいいと思うよw。企業の同調圧力もキライだが、左派の同調圧力もキライという人は少なくない。

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日経サイエンス2019年3月号 

 日経サイエンス2019年3月号は`第1特集が「太陽」、第2特集が5年で世界を変える10の科学技術。

 AIシステム最前線では、大田佳宏のArithmer。大手損保と共同開発した運転動画解析システム(ArithmerDia)や紳士服メーカーと開発したスマホ利用の自動採寸システム、歯科技工所を運営する企業と組んだ義歯リアルタイム自動生成システムなど。北海道のニセコ町に現代数学の拠点(国際数学研究所ニセコ)を設立する準備を進めているという。

 フロントランナーは自己組織化の藤田誠(→wiki)。

 ニューススキャンでは、ハイパーループ関係。日本では慶応大学が研究を進めているようだ。意思を生む脳回路は、Ryan Darbyによるエイリアンハンド症候群(→wiki: Alien hand syndrome)を通しての意思/意識研究。自己認識と行為主体性の座としての楔前部。



 第1特集の「太陽」。藤原定家の日記など、古文書の記述から昔の巨大磁気嵐のような太陽現象を調べる話など。2018年2月号のワールドニュースにも載っていたキャリントン・イベントの話題は重要。ますます電信網への依存を深める世界の脆弱性に、いかに対処するか。

 第2特集は、5年で世界を変える10の科学技術。
 コンピュータ分野では産業分野で大きな影響を与えているAR。安価・高速のAR対応モバイル機器用半導体チップが開発されれば、より多機能のスマートグラスが商品化される。
 医学では迷走神経刺激療法。群発頭痛や偏頭痛を緩和するための刺激装置がFDAの承認を得たという(アメリカでオピオイド禍がいかにヒドイかを物語っている)。
 幹細胞から育てた食肉。AIで分子設計は、AI創薬の話。製薬分野では生成的機械学習により、数百万種もの化合物のライブラリーから新薬になりそうな候補を絞り込む試みが行われている。米国政府もAI支援分子設計の研究を助成。MGI(マテリアル・ゲノム・イニシアティブ)に多額の投資をおこなっている。ICP2016で関係することを述べていた北野宏明の推薦だろうな。人工知能学会全国大会2016の頃は野武士だった清水亮も、北野が執行役員を務めるソニーの傘下に入り、経営者としての負担が軽減されたようで何より。
 「プラズモニクスで毒物検出」:表面プラズモン共鳴(→wiki )は超微小ナノアンテナや高効率太陽電池などの製造に利用できる。メタマテリアルの一種? プラズモニクス利用のセンサーだけで、北米市場規模は2027年に4億7000万ドル規模が予想される。
 NISQ(ノイズありスケールしない量子コンピュータ by John Preskill)では量子誤り訂正はまだ実行できないが、NISQ向けに有望視されるアルゴリズムはシミュレーション用と機械学習用。敵対的生成ネットワーク(GAN)の量子コンピュータ版の開発進展が見込まれる。

 後半部はナショジオ的な記事2つ。インドと中国のケース。

 最初の記事は、インド初の生物圏保護区の設置に寄与したエコロジスト、M.ガジル(→wiki: Madhav Gadgil)に関するもの。聖なる森、ポナド・ケディア。

 中国「海綿城市」は、「土人設計」(→公式)――「士人」設計と思ってよく見たら「土人」だった(笑)――を設立したランドスケープ・アーキテクト、ユー・コンジェン(→wiki: Kongjian Yu)関連の記事。
 彼はアメリカ国土計画をつくりあげたウォレン・マニング(→wiki)にヒントを得て、中国全土の景観総合計画に取り組んでいるという。北京市の「生態学的セキュリティパターン」を地図化して水害リスクの高い土地を特定し、市当局に警告していたが、2012年7月21日に北京市は60年ぶりの豪雨で道路冠水、79人の死者を出した。金華市・燕尾洲公園が増水を吸収。内。ボルガ川沿いのカザン市でバイオスウェイルをつくって水の流れを遅くするなどした話。ユー・コンジェンは21世紀の禹(→ブログ:上海双年展2018)と讃えられる日が来るかもしれない。

 ちなみに中国は世界森林資源評価(FRA)2015でも、2010~2015年までの正味の森林増加面積がダントツ世界第1位。中国といえば土壌・水質・大気汚染というイメージをいまだにもつ人は、こういう記事を読んで認識をアップデートしたほうが良い。そーいえば、ナチス・ドイツも有機農法などエコロジーには熱心だったなー、などと言ってはいけないw。

 ブックレビューは井上亨による『サピエンス異変』と丸山敬による『トランスヒューマニズム』。森山和道「読書日記」に登場する『バイオハッキング』や『ワンス・アポン・アン・アルゴリズム』も読んでみたい(が時間があるだろうか)。

 文中敬称略。

日経サイエンス2018年12月号 

 冒頭はノーベル生理学・医学賞関係。日本人受賞者は本庶佑だが、編集部・出村政彬の記事では、PD-1遺伝子の発見者、石田靖雅(→wiki)や湊長博、岩井佳子ら「チーム本庶」の四半世紀にわたる軌跡にフォーカス。別の記事では、チーム本庶とPD-1抗体薬、ニボルマブ(商品名オプシーボ)を共同開発した小野薬品の活動にも触れている。

 PD-1のPDはプログラム細胞死(Programmed cell death)の略。プログラム細胞死といえば、90年代に広く読まれた多田富雄の『免疫の意味論』を思い出す。「自我」の問題はそれまで文系的に語られることが多かったが、自己/非自己をめぐる免疫の話に結びつけた本書の存在意義は大きい。大特集の「新・人類学」にも少し関わってくる。多田富雄・河合隼雄編『生と死の様式』には、当時49歳の本庶佑が書いた論文「生命の価値――生物学的考察」が載っている。
 囲み記事では、早石修(→wiki) の研究室にいた本庶佑の言葉が良い。「サイエンスというのは国際的なレベルで語らない限り意味がないと学んだ。国際的な自分の研究の立ち位置を常に考えていないと、その研究は自己満足になる」は、サイエンスに限った話ではないだろう。

 ノーベル物理学賞はナノテク関係で、光ピンセット(→wiki)のアーサー・アシュキン、及び超短パルス(→wiki)高強度化手法のジェラール・ムルとドナ・ストリックランド。

 ニュースウォッチ:リドック症候群の話。動きの知覚に関わる脳のMT野。なんか、YCAMでみた『手をなくした少女』(→ブログ)を想い出した。形や色の知覚と動きの知覚。あるいは欠如のもつ豊かな力。アール・ブリュットとサイエンス。

 コネクトームを統計的に解析する主要な方法になるかもしれないRNAバーコード法。MITテクノロジーレビューのこちらの記事にも関係。一次視覚野の殆どの細胞は、接続先や接続先の数にもとづき6グループに分けられる。ほかにも、四肢の対称性の獲得とかも面白い。

 大特集は新・人類学。進化人類学の所見をグローバルヒストリーにうまく組み入れて大ベストセラーとなった『サピエンス全史』。著者ユヴァル・ノア・ハラリ の新刊『ホモ・デウス』にあやかった感じかな?。

ヒトがヒトを進化させた by ケビン・ラランド(Kevin Laland)
おもにアラン・ウィルソン(→wiki、英文wikiをおすすめ)が提唱した文化的動因説の話から。模倣は自然界に広く観られるが教育はめったに観られない。伝達の忠実度。教育と累積的文化の共進化。社会的行動と遺伝の間のフィードバックループ:他人の行動を正確に模倣するという社会行動が、より優れた認知スキルと大きな脳を選択し、大きな脳が教育と模倣の効率を高める、と解く。人類はこの好循環を他の類よりうまく獲得。言語は教育負担を低くして精度を高め、その範囲を広げた。

「思考力をもたらした2つの性質」 by トマス・ズデンドルフ
『現実を生きるサル 空想を語るヒト』の著者である彼によると、人間とほかのサルとの違いは大きく言って2つ。「入れ子構造を持つシナリオの構築」と「互いの心を結びつけたいという欲求」。記憶やコミュニケーション、共感、伝統、社会的推論、物理的推論は、ほかの動物たちと共通する能力だが、この2つの特性を得ることで、人間に特徴的な能力、心の中での時間旅行や、他人の心の読み取り、抽象的な説明と予測、言語、道徳性、文化が生まれた。(再帰性はチョムスキーのキーワードでもある)。

意識を持つのは人間だけか」 by スーザン・ブラックモア
『ミーム・マシンとしての私』等でおなじみの彼女は、T.ネーゲルやデネット、トッド・ファインバーグ、S.ミズン、ジュリアン・ジェインズ、チャーチランド夫妻、ニコラス・ハンフリーら、ある種の読書オタにはおなじみの著者の研究に触れながら、日経サイエンス9月号(→ブログ)の究極の未解決問題「意識とはなにか」の問題を「心の哲学」に引き寄せて解説している。監修は信原幸弘(→wiki)。

高度な言語が生まれた理由」 by C.ケネリー
 マイケル・アービブ(→wiki: Michael A. Arbibのエボデボソシオ(EvoDevoSocio)アプローチやサイモン・カービー(Simon Kirby)率いるエジンバラ大学の言語進化センターの実験などを紹介。「言語は生物学的要因と個別の学習、個体から個体への言語の伝達の組み合わせから生じるようだ。この3つの系はまったく異なる時間スケールで動いているが、ひとたびかみ合って連動すると、並外れたことが起こる。言語が生まれるのだ」として、言語の偶発的発生を説く。アービブのHow the Brain Got Language Towards a New Road Mapとか読めっとことかな。

分身AIがつくる社会」 by ペドロ・ドミンゴス
 デネットの新刊本を本屋で立ち読み^^;したら、引用されていたペドロ・ドミンゴスのマスターアルゴリズム。機械学習を主に支える5つのアルゴリズムとして、進化的アルゴリズム(→wiki)、深層学習、類推、記号的学習(symbolic)、ベイズ定理(→ブログ:異端の統計学ベイズ)をあげるが、これらにはそれぞれ一長一短がある。「深層学習は画像認識や音声認識などの知覚問題に向いているが、常識の獲得や推論といった認知処理は苦手だ。記号的学習は、この逆となる。進化的アルゴリズムはニューラルネットに比べてより難しい問題を解けるが、答えを出すまでに非常に長い時間がかかる場合がある。類推的手法はごく少数の例から学べるが、それぞれの例に与えられた情報が多すぎると混乱に陥りやすい。ベイズ学習は少量のデータを扱うのに最も有用だが、ビッグデータとなるとコストが掛かりすぎて不可能」。これらの長所だけを組み合わせて、あるデータから抽出可能なすべての知識を学習できる「マスターアルゴリズム」を作り出すのが、機械学習研究者の目標。
(中略するがw)、10年以内に人は、自分の分身AI「デジタル・ダブル」をもつようになり、あらゆる種類の仮想的インタラクションを代理してくれる、という。ライプニッツ「最善説」の21世紀バージョン? 事実がfixされる都度、デジタルダブルが自分の人生の可能性モデルを改訂していくイメージなのだろうか。あくまでも分身によって導かれるのは、意思決定上の「より高い確率の推論」であって、実際の現実は常に予期せぬファクターにさらされるように思うが。あと「再帰性」だよね。
「これがあなたにとって最適化された人生です」て提示された途端に、心の中の天の邪鬼が騒ぎ出すw。ユートピアは達成された途端にディストピアへの転落を始める、みたいな。