エヴァンゲリオン展/まどマギ~叛逆の物語 

エヴァンゲリオン展
 小倉にある北九州市漫画ミュージアムエヴァンゲリオン展
 おもに「新劇場版:破」からイメージボードや設定資料、画コンテ、レイアウト(背景)などの原画を展示している。
 庵野監督は『王立宇宙軍 オネアミスの翼』制作の際にスペシャルエフェクトアーティストの名で参加していただけあって、爆発・火炎・地割れ・激光・ビル崩落といった特殊効果に強いこだわりがあることが、いくつかの原画からうかがわれる。
 また、庵野監督がウルトラマン等の特撮を熱愛していることはよく知られており、「新劇場版:破」の第8使徒戦の背景では株式会社特撮研究所に保存されたミニチュアの図面から起こした民家やビルのCGモデルを使用し、手書き表現のアニメのみにこだわることなく、特撮・CGの併用にも創作的関心を注いでいる。ビルとひとことで言っても、オフィスビル、商業ビル、マンションなどの集合住宅、ホテルでは窓の形状が異なる。マンションひとつとっても上部が段状になったタイプや切妻風の屋根をのせたタイプなどさまざまで、ほかにも高架水槽や電信塔、電信柱、都市高速など、都市を物理的に形成する人工物をこと細かに再現している。とはいえ、クリエイションにとって重要なものについては、やはり手書きの力が欠かせない。高倉武史による二子山第二要塞の変電設備や超伝導用大型冷却システム等、EVA専用拘束兼移動式射出台などの細緻なデザインは、原画を見るだけでぞくぞくするほどだ。線の一つ一つに神の経(みち)ならぬ神経が通っている。ビジュアル面でのディテールに対する強い「こだわり」は、エヴァの魅力の多くを説明している。
 ただ、そこにはもはやストーリー面や物語のテーマといった側面では「メタ」や「多重・多様な解釈惹起」や「深読み」といったところで終わっている、との「諦観」が横たわっているのではないか、とつい思ってしまう。
 物語は視聴者の脳内で自由に生成してもらうとして、制作者は魅力的な「キャラ」と豊饒な解釈(それは視聴者による2次制作を導く卵となりうる)を誘発する原―物語、物語の基底を用意することに徹するということ、なのだろうか。

 まあ、そこはやはり肯定的にとらえて、言葉とは異なる「イメージ」の思考、「形態」の思考――簡単な例でいうと、精緻なメカニカルの動きは、何かが「運動する」ことの原理が単純な運動の数多くの組み合わせから成っているということをビジュアルで教える――を読み取る方が建設的だろう。優れた造形はそれ自体が観る者を思考に向かわせる、つまり〈教育〉となりうる(ただ、宮崎駿は、『風立ちぬ』で庵野に堀越二郎の声の役を担わせることで、[結果的に]庵野の〈思考〉に欠けたものを暗黙裡に指摘する)。


 ちなみに、『エヴァ展』の前にアニメ映画『劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語』をみた。
 既存の「魔女っコ」アニメに対する『まどマギ』の関係は、ロボットアニメに対する『エヴァ』の関係に似ている。「円環の理」と「虚無=0」の関係や、複数人のセカイが混在し交錯するメタアニメの謎解き(or多重解釈)の魅力は、先行する『エヴァ』の成功があってこそ発揮できたのだろう。とはいえ、少女性と「願い」、「愛=エロース」の利己性とアガペーと無垢性の関係など『エヴァ』に欠けたテーマをそなえている。魔法少女たちの苗字がみな、女性的な名前であり、二重性を帯びていることは、ディオニソス神の《二重誕生》を想像させる。キュウベイはインキュベータ(卵を孵す者)と睡眠中の女性に淫夢を見せて悪魔の子を孕ませるインキュバス(=男性夢魔)を掛けたダブル・ミーニングだろう。また、劇団イヌカレーが手掛けるコラージュアニメは、コラージュ思想の黎明期を彩るシュルレアリスムの「優美な屍骸」やマックス・エルンストの『百頭女』を想起させて面白かった。
 ただ、おのれの「男性性」が邪魔するせいか、身体的にはいま一つノレなかった。ベラドンナを点眼したような大きなキラキラ眼やこちらの身体を奥底から弛緩・融解させる可愛らしいアニメ声、舞い踊るフリルには、どうしても身体的(?)に抵抗感をおぼえてしまう。 あいちトリエンナーレ2013納屋橋会場でみた片山真理の世界と表裏一体のもの、とでも言おうか。

 それにしても、wikiに記された脚本家の虚淵玄――うろぶちげん――の家系にちょっと感動してしまった。曾祖父は日本の鉱物学の創始者、和田維四郎で、祖父はなんと探偵作家の大坪砂男(筆名の由来はホフマン『砂男』)。澁澤龍彦が『快楽図書館』で紹介していて、そのうち『全集』を覗いてみようかと思った人だ。wikiによる来歴もドラマティックだ。なんかジェムストーンひとつとっても何やらいわく因縁を想像してしまう。さらに、父親は俳優で劇作家でもある和田周で、母親は声優の瀬畑三枝子。さぞかしフィクションの横溢した家庭環境だったに違いない、と勝手に想像を膨らませたとしたら、ジジイのそしりを免れまいw。
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