オープンデータ2~行政&情報システムより 

 年度替わりでいったん停止していた「データカタログサイトβがようやく再開した。だからというわけでもないが、 オープンデータデイ2014に引き続き、オープンデータ関連。

 行政情報システム研究所の「行政&情報システム」2014年4月号にオープンデータの特集が組まれていた。その中からいくつか。

Social Good小事典』の著者で株式会社ソーシャルカンパニー代表の市川裕康は、アメリカにおける"シビックテック"――Civic Technology――の潮流を紹介している。
 シビックテックとは直訳すると"市民の技術"だが、要するに地域や公共の課題を解決するための技術使用、という意味だ。本川裕の『統計データはおもしろい! -相関図でわかる経済・文化・世相・社会情勢のウラ側- !』を読んでいると、デイヴィット・リンチ『ツインピークス』のローラ・パーマーが、売春やドラッグに関わる一方で、「こうした性向と矛盾なく老人への配食などのボランティア活動にも熱心だったというドラマの設定にビックリした」というオチャメなエピソードに出くわしたが、一般には草の根までコマーシャリズムに汚染されていると思われがちなアメリカは、基本的に小さな政府を指向していることもあって、NPO/NGO等を通じたボランティアの活動が極めて盛んだったりもする。(キリスト教的な伝統も背景にあるだろうし、大都市圏と地域で状況は異なるかもしれない)。
 これはボランティア・プログラマーによるOSS――オープンソースソフト―の開発が活発であることにも如実に表れている。日本ではプログラマーというと激務を強いられ、ボランティアなんてやってる場合ではない、という風潮があるが、それはプログラマーの仕事に対する一般人のリスペクトの欠如や無理解、IT産業の営業体制が現存顧客の「御用聞き」を第一優先事項とする日本的な商慣習(ヘンリー・フォードは「車がなかった時代は、人びとに「何が欲しい?」と聞いても「より速い馬が欲しい」としか答えなかった、と言った)・文化慣習から脱却できていないこと、システマティックで効率的にシステム開発を進める体制ができていないことことにも起因するが、最近は変わってきてはいるものの、やはり、ボランティア文化がまだ成熟していないことに由来するのではなかろうか。
 話が逸れたが、市川はナイト財団(Knight Foundation(英語サイト)が2013年12月に発表したThe Emergence of Civic Tech: Investments in a Growing Fieldの内容について解説している。

 シビックテック事業はだいたい以下のようなクラスターに分類される。()内は代表的な団体。

Ⅰ.オープンガバメント関連
 ・データアクセスと透明性(Socrata)
 ・データ・ユーティリティ(mySociaty,Code for America
 ・住民による意思決定(LocalOcracyy)
 ・住民からのフィードバック(SeeClickFix)
 ・視覚化・マッピング(Azavea
 ・選挙/投票(TurboVote
Ⅱ.コミュニティアクション関連
 ・公共分野のクラウドファンディング(Neighbor.ly
 ・コミュニティの組織化(change.org/jp
 ・情報のクラウドソーシング(waze(日本語)
 ・近隣住民のためのフォーラム(Nextdoor
 ・住民同士のシェアサービス(airbnb(日本語)

 たとえばデータ・ユーティリティに分類されるCode for Americaは、高度なウェブの専門家を選抜して地方行政機関に約1年派遣し、行政サービスの改善や市民参画のためのウェブサービスの構築をおこなうプログラムを提供しているNPOだ。2013年の年間予算は800万USドル(助成金が7割、事業収益が2割強)。日本でもシビックテックを支援するCode for Japanが2013年末から活動を開始し、各地にCode for ××が誕生しつつある様子がうかがわれる。
 LocalOcracyは地域住民による意思決定への参加プラットフォームを提供、Azaveaは情報の視覚化やGIS――地理情報システム――を用いて市民に役立つ情報を提供している。
 TurboVoteは選挙登録の促進や公正な選挙プロセスを支援する団体、Neighbor.lyは地域のプロジェクトのためのクラウドファンディング・プラットフォーム、change.org(→wiki日本語:Change.org)はオンライン署名プラットフォームで、日本のサイト(→change.org/jp)もある。
 サンフランシスコに拠点を置くNextdoorは、2011年に地域住民のグループをつないでコラボレーションを促進するサービスを始めた。waze(日本語)は渋滞などの道路情報をユーザー間でシェアする試みである。
 「住民同士のシェアサービス」部門では40社以上が存在し、投資額も大きい。代表格のAirBnBは、世界最大手の空き部屋シェアサイトで、日本語のサイトもある(⇒airbnb)。
 アメリカのPersonal Democracy Forumというカンファレンスでは、社会起業家やアクティビスト、一般企業、ジャーナリスト、学者、政治家、連邦政府や地方政府の職員等が一堂に会して、テクノロジーとメディアが政治や行政、市民活動に与えるインパクトについて議論し、交流を広げるという。MITメディアラボ所長で創発民主制やシェアリング・エコノミーを提唱する伊藤穰一や、 シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」の著者でビッグ・データ時代の預言者とも言われるネイト・シルバー、change.orgの創設者でタイム100――TIME誌の"世界で最も影響力のある100人"(2012年)にも選ばれたベン・ラトレイ(Ben Rattray)等も参加しているらしい。
 市川は他にも、海外の「シビックテック」のトレンドを紹介するサイトとして、
techpresident.com/Government Technologyを紹介しており、Code for America監修の『Beyond Transparency』を現在翻訳中とのこと。

 (株)公共イノベーションの川島宏一による「オープンデータからソーシャルイノベーションへ」。この人は佐賀県の特別顧問や大阪府市の特別参与をしている人で、今年からオープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパンの副理事長を務めている。
 本文では「ソーシャルキャピタルの厚みのある社会をつくること」、そして「ソーシャルイノベーションが当たり前のように起こっている社会の実現」こそが、オープンデータ政策の中心的目標であるべきだと提言し、アイデアソン・ハッカソンで生み出されるさまざまなアイデアをビジネス展開するための条件や方法論について、いくつかアイデアや意見を述べている。

 私見としては、公的課題をめぐるアクションでは、「応援団」や「コーチ」も大事だが、実際に行動するプレイヤーに適度の"お金"――そう、あくまでも"適度"のお金――がまわる仕組みこそが肝要である。それは、グーグルが全世界的に「アフィリエート」という仕組みによって、ネット世界を豊かにしようと努める人びとに「お金」を稼ぐ方法を提供したことを例にとって考えると分かることだ。もちろん、情報弱者を食い物にするあこぎな「情報商材」業者を増やすことにもつながったが。
 日本はこれまでビジネス応援団――つまり、コンサルタントや金融機関、県や市の「経済部門」、産業振興系の公的機関、教育機関、大手メディア――ばかりが肥大化し、アントレプレナーたちは金銭的にも人物評価的にもリスクばかりとらされてきた。もちろんそれはヤマっ気ばかりで物事をあまり深く考えない起業家が過去に多かったせいもある。
 とはいえ特に90年代以降、「頭のいい」人たちにとっては想定収益×成功率や失敗した時に失うものを考慮すると、巨大な組織に入るand/or「応援団」的な職業に就いた方が圧倒的に「得」、といった観が極めて強くなった(ちなみにアメリカではコンサルは一定期間、対象企業に所属して課題解決にたずさわるケースが少なくない。日本でも技術コンサルなどはそうした例もあるようだが。
 一般の営利事業についてそうなのだから、ましてや社会起業においてはなおさらである。
 そういう風潮が変わらない限り、メディアがいくらヨイショしようが、日本では社会起業家はこれ以上あまり増えないだろう。公共事業のあり方自体の変革と共に考えていく必要がある。

 以上、敬称略。
スポンサーサイト