ビートニク映画祭@YCAM 

 今年の3月後半にオーディトリウム渋谷であったビートニク映画祭の上映作品がYCAMでも公開されるというので行ってみた。

湖岸
 コンラッド・ルークス監督の『シッダールタ』。ヘルマン・ヘッセが1922年に発表した同名小説の映画化。午後の陽光に照らし出される沐浴場は紛れもなくインド。チュラムの煙がヒッピー・カルチュアのアトリビュートであるバングを想起させるが、それ以外にフラワー・ムーヴメントを直接イメージさせる映像はない。クレジットに撮影場所が"リシケシ"とある。60年代ヒッピーの聖地である。リシケシには行ってないが、昔、バックパッカー時代にバンコク経由で当時カルカッタと呼ばれていたコルカタに入り、3週間くらいかけてバラナシ、デリー、ウダイプール、プシュカールを回ったことがあって、当時のことを懐かしむ。バラナシではウォークマンでシャンカールを聴きながら、ガンジスの彼方に昇る朝日や水牛たち、火葬場の様子を目にしたものだ。

trailerHouse
 『キャンディ・マウンテン』。50年代のアメリカをフレーミングした写真集『アメリカ人』で有名なロバート・フランクが監督したザ・ロード・ムービー。トム・ウェイツやジョー・ストラマー、アート・リンゼイらが出演している。ギターづくりの伝説的名人、エルモアが終盤に漏らす「自由は旅とは関係ない」というセリフは、内容に批評性を挟み込む試みでじつに上手い。燃えさかるギター、エンドロールに流れる曲が良い。たしかジム・ジャームッシュがリスペクトしていて、日本での公開時期を考えると、観に行っていてもおかしくないのだが、どうしてみなかったのだろう? 仕事が忙しくて、いつのまにか公開が終わってたってところだろうか。

CityLightsBooks
 ジョン・アントネッリ監督『ジャック・ケルアック/キング・オブ・ビート』。 60年代のヒッピー・ムーヴメントを先駆けたビートニクの中心人物、ジャック・ケルアックのドキュメンタリー。テレビ番組でインタビューを受けるケルアックのシャイでナーヴァスな表情が印象的。
 アメリカでは今でもときおり?ケルアック・リヴァイバルがあるようで、ニューヨークタイムズの人気コラムニスト、ジョン・リーランドも2007年に関係書を出している。→ケルアックに学べ 「オン・ザ・ロード」を読み解く6つのレッスン (P‐Vine Books)。本書でも明らかなように、ケルアックには2面性があった。彼の作品に熱狂した多くのヒッピーが彼に抱いていたイメージ――即興性とリズムと東洋的精神世界に彩られた側面と、それとは正反対の、同性愛者やユダヤ人に偏見を抱く「保守的」な労働者階級という側面と。ギンズバーグは後年「ジャックにはがっかりさせられたよ」と漏らしていたが、なにもそれは人格の分裂などではない。対人的にどちらがより強く表に現れるかどうかに過ぎない。

 
 アニマルズの↑の曲が印象を決定する『スウィンギング・ロンドン1&2』(※原題は異なる)。監督のピーター・ホワイトヘッドは、ローリング・ストーンズやピンクフロイド等のミュージックビデオを手がけた人。
 60年代の流行の中心は、パリでもニューヨークでもなく、ロンドンだった。ビートルズもストーンズもツィギーのミニスカートも、すべてロンドンで生まれた。1はそんな熱狂するロンドンの1966-7年当時のロンドンを活写する。アラン・ オルドリッジによるボディ・ペインティング、ギンズバーグのポエットリー・リーディング、マイケル・ケインやデイヴィッド・ホックニーのインタビュー、ミック・ジャガー、ブライアン・ジョーンズ…。"Mini-Skirts and Mini-Morals"や"Obssessed with Sex" というタブロイド紙?のタイトルが再三登場。それから10年後に制作された2では、過去を振り返る醒めた視点が投映される。最後の、岩の間からほとばしる水が強風に煽られて烈しい水煙となるショットは記憶に焼きつく。

 『チャパクア』はこちら

 クローネンバーグの『裸のランチ』は日本公開時に見ているので最初からパス。ボブ・ディランの『ドント・ルック・バック』は見るつもりだったがどういうわけか勘違いして、見ないで帰ってしまった!
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