クーリエ・ジャポン最終号 

 国際派御用達感が少々鼻に付くが個々の記事によっては新たな発見をもたらしてくれたクーリエジャポン。2月25日発売の2016年4月号をもって休刊し、3月1日からネットでの有料会員制となるらしい。

 最終号の特集は、「想像以上に面白く、明るい「未来」へ」と題して、ピンカーのインタビュー記事やベイシック・インカム、Airbnb、セックスロボット、デジタル読書で脳は「進化する」等。

 スティーブン・ピンカー(→wiki)の主張は『暴力の人類史 』に沿っている。いわく「利用可能性ヒューリスティクがメディア特性により未来予測をネガティブな方向に偏らせる」「資本主義は暴力を抑止する最良のシステム」「女性指導者が多くなると、勝利やステータス、支配だけを目的として行使される暴力の発生は抑制される」「第2次世界大戦後の大きな進歩を象徴するのは国連の「人権宣言」」など。
 これに真っ向から反論するのが『ブラック・スワン』等で知られるナシーム・ニコラス・タレブ。いわく「ピンカーは主な戦争の死者数を約1/3に見積もっている」「好ましい風潮を示すエビデンスだけを過大評価している」。

 町山智浩の「USニュースの番犬」は例によって大統領選予備選挙の様子。今回は共和党を取り上げる。
 レーガン時代にハイエクやフリードマンの「新自由主義」を導入して保守を現代的な思想に洗練しようと図った保守論壇誌「ナショナル・レビュー」がドナルド・トランプを人種差別主義者だと強く批判。ニュースでも伝えられるとおり、トランプが"自腹"で選挙に臨むのに対し、対立候補のテッド・クルーズは、ヘッジファンドのルネサンス・テクノロジーズのCEO、 ロバート・マーサーほか財界からの膨大な額の選挙資金と、国民の4割を占める福音派(→wiki:アメリカ合衆国の福音派)、そしてティーパーティーに支持されている。
 とはいえ、トランプはサラ・ペイリン(→wiki)を味方につけ、福音派の大物で共和党のキングメーカーだったジェリー・ファルエル(→wiki)の息子の支持を獲得して、福音派からかなりの票を奪えるようになった。(「テッドと違ってウォール街からカネもらってねーよ」という主張でそれなりに支持を伸ばすのは、ホンネ的暴言への同調だけでなく「反ウォール街」感情が国民の間に共有されているせいだろうか)。ただし、トランプには「歩兵」がなく、有権者を投票所まで足を運ばせるための「地上戦」(=戸別訪問)に弱いという。

 なお、町山は1月号で、共和党の支持者の多くは白人高齢者で、共和党のコンサル団体ノース・スター・オピニオン・リサーチの主宰ウィット・エアーズが「共和党は過去6回の大統領選で04年(ブッシュ対ジョン・ケリー)の1回しか総得票数で勝っていない」と指摘した点、白人人口の減少傾向、民主党の若年層取り込み政策等により、共和党が大統領選に勝つ見込みはほとんどない、と書いている。

 さてさて、1968年(→wiki:1968年アメリカ合衆国大統領選挙)や2000年 (→wiki:2000年アメリカ合衆国大統領選挙)のときみたいな"奇妙のこと"が起こらなければよいが。

 ワールドニュースヘッドラインでは、米国トップ大学10校の課題図書(そんなもんあったんやー)ランキング。プラトンの『国家』やホッブスの『リヴァイアサン』、トクヴィルの『アメリカの民主政治』といった定番の古典のほか、ロールズの『正義論』やアクセルロッドの『つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで (Minerva21世紀ライブラリー)』がトップ10に入っている。ほかには、フランスで昨12月、フランスの最高裁にあたる破棄院が「不倫はもはや反道徳的とはいえない」という判断を下した件(ベッキー頑張れ的何か?)、おひとりさま王国デンマーク、北朝鮮との国境に接する「東北アジアの心臓部」で世界各国のスパイが集まるという中国吉林省長白県など。

 歴代編集長――初代編集長(05~10.2月)の古賀義章と2代目(10.3月~15.11月)編集長、冨倉由樹央が10年を振り返る「後世に残るベスト記事はこれだ!」。

 2006年から英国王室でチャールズ皇太子の秘書官を務めたというフェイフェイ・フウ(Feifei Hu)は、退職して日本の北海道で有機農業とポロ馬の育成・調教を始めるべく準備中。スプニツ子!は瀬戸内国際芸術祭の準備にいそしむ。世界が見たNIPPONは坂茂を、「セカオカ」はアルゼンチン料理を、安田峰俊の「ダダ漏れチャイニーズ」は農村の荒廃「空心化」を取り上げる。

 文中敬称略。



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