『日経アーキテクチャ』&『ナショジオ』メモ 

『日経アーキテクチャ』2016年6月23日号メモ。

 東京では2020年のオリンピックに向けて再開発が目白押しだが、パリでもアンヌ・イダルゴ市長のもと、複数地域で再開発が進行・計画中。
 パリ西郊に広がるブローニュの森の南、セーヌ川が深く湾曲するあたりに浮かぶ中州のセガン島は、かつてルノーの工場に覆われていたが、ジャン・ヌーヴェルをマスターアーキテクトに迎えて大規模な再開発が進行中。西端を音楽地区、東端を芸術地区とし、中央部分にショッピングモールや緑地を配するというものだが、音楽地区に計画される多目的コンサートホールを中心とした複合施設を坂茂が担当。地下1階地上9階建て、延べ面積3万6500平米。2017年4月オープン予定。坂は2010年にポンピドー・メスの設計を手掛けており、2014年にはプリッカー賞を受賞。日本でも最近は大分県立美術館などを設計。
 ほかにもパリでは40年ぶり(!)となる超高層ビル「トゥール・トリアングル」(ヘルツォーク&ド・ムーロン設計)が2020年完成予定。また、田根剛とリナ・ゴットメ、ダン・ドレルの設計事務所DGTが、パリ13区の廃駅となったメッセナ駅を再活用する「メッセナ 食の循環」案でコンペに選ばれ、藤本壮介(→ブログ:直島2016春)が、17区の環状道路の上にパリの環状道路の上に森と居住区を浮かべるという「ミル・アルブル」案で採用された。こちらでも書いたが、世界各地で空中庭園=屋上庭園がブームとなりつつある。


 素材特集では「隈研吾が着目する建材」と題して炭素繊維やETFE(熱可塑性フッ素樹脂)、印刷アルミパネルのアートテックなどを紹介。
 旭硝子は太刀川瑛弼のNOSIGNERをデザインパートナーに迎えてミラノサローネ2016に「アモルファス」を出展、同社の薄板化学強化ガラスをアピールした。2015年にはアーテンバーク(川島範久+佐藤桂火)による空間デザインで、液晶ディスプレイを直接張り付けられるインフォベールやグラシーンを紹介した。調光ガラスもこれから期待できる。


 公共建築物等木材利用促進法を梃子にして、直交集成板(CLT)の普及をはかる動きがある。CLT(Cross Laminated Timber)はオーストリアを中心に1990年代から研究されてきた新しい木質構造用材料。当地では中層の集合住宅などに使用され、今では10階建てのビルまである。本来なら先進国でトップクラスの森林率と優れた木造建築の伝統を誇る日本でこそ研究開発が進められるべきものだったが、まだ遅くはない。
 一緒くたにするのはよくないが、飯島澄男によるカーボンナノチューブの発見やメタマテリアルなど、材料工学の動向は要注目。

 京阪枚方市駅前にCCC(ツタヤ)が手がける複合商業施設「枚方T-SITE」が完成。竹中工務店(原田哲夫ら)の設計。フレームだけのキューブを重ねたような全面ガラス張りのスケルトン構造。T-SITEとしては代官山、湘南に続く3店舗目だが、規模は最大。枚方は蔦屋書店の創業地。セレクトショップやライフスタイルショップが増加する昨今、ライフスタイル提案型のデパートメントを目指しているらしい。無印良品が有楽町やキャナルシティ博多で、松岡正剛の選書によりMUJI BOOKSを展開しており、カルチャー指向のライフスタイルショップが増えていく傾向がみられる。一方でデパートの長期的低迷に伴い、スーパー業界とデパート業界がショッピングモールなどでカテゴリーを超えた市場競争を繰り広げている。ツタヤもその一角に食い込むつもりなのだろうか。

 磯達雄と宮沢洋の建築巡礼(おー、今でもやってるんだー)では、宇部の渡辺翁記念会館を取り上げていた。ん?すでに『昭和モダン建築』?で取り上げていたような気がするが…。




 新建築7月号も少し覗く。尾道のエレテギア、小豆島の撰果場ギャラリーなど。尾道は豊島(とよしまの方)に今年春できたゲルハルト・リヒター新作があるし、鞆の津ミュージアムやクシノテラスがある福山からもさほど遠くない。豊島の連絡船の便が少ないのがネックだが、そのうち行ってみたい。




『ナショジオ』6月号は大特集が「狙われる人類の遺産」と題して中東・南米の盗掘ビジネス。

 シウダー・ファレスの年間殺人件数が2015年に256件まで減少し、世界で最も危険な50都市のリストから外れたらしい。マキラドーラでの出稼ぎで賃金労働者の生き方をおぼえた元メキシコ農民たちは、より良い生活を求めてアメリカへの移住を目指したが、不法移民の取り締まりが強化され、やむなく国境の町シウダー・ファレスに滞留。ファレス・カルテルが不法移民を利用した麻薬密売ルート確立。2008年の米国景気後退を受けてファレスでは失業者があふれた。そこにシナロア・カルテルが進出してファレス・カルテルとの抗争を繰り返し…というのが映画『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』(→ブログ)や『悪の法則』で描かれた2010年代前半の荒れ狂うファレスの経緯。背景にはアメリカの根強い麻薬需要やメキシコ近代化の諸問題、軍・政府・警察を含むメキシコ行政の構造的腐敗が絡んでいるが、ティファナの警察庁を務めて凶悪犯罪を1年で激減させた元軍人のフリアン・レイサオラの活躍などもあって、とりあえずは沈静化したようだ。沈静化に向けた努力も映画のネタになるのかも。

「アートな太陽熱発電所」はネバダ州トノパー近郊のクレセント・デューンズ太陽熱発電所。太陽電池タイプではなくヘリオスタットという反射鏡を1万基以上用いて太陽熱を集め、溶融塩貯蔵タンクに蓄え、その熱で蒸気を生成して発電用タービンを回す仕組み。発電能力は110メガワット7万5千世界の電力をまかなえるという(→wiki:太陽熱発電)。

こちらの記事によると、アメリカではこじゃれたソーラーパネルをデザインする動きが複数あるようだ。

 ほかにも、カリフォルニア州モントレー湾で淡水化計画を進めるディープウェーター・デサルの話などが興味深い。
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