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映画『万引き家族』 

 地元の映画館で、是枝裕和監督の新作映画『万引き家族』を観る。

 概要はこちら(→wiki:万引き家族 2018-6-25)。但し、本作の場合、事前情報なしに観たほうが愉しめる。

 映画を観る前はタイトルのイメージから、現代に蘇るサンカ(→wiki)の話かと想像を膨らませてしまった^^;。まあ、万引き行為を示す符丁などは、サンカっぽいといえばサンカっぽい。

 おもな舞台は、新しい集合住宅に囲まれて、取り残されたようにうずくまる平屋建ての日本家屋。昭和30年代を想わせる古いタイル張りの風呂場。色褪せた襖。リフォームされた形跡に乏しい狭い家屋のなかは、生活用品で溢れかえっているが、エアコンはなく、王兵 『三姉妹』の家屋とは異なる、近代的「貧しさ」が漂っている。

 樹木希林扮する初枝は、不動産屋から何度か土地の売却を打診されたに違いない。
 しかし、(たぶん)別れた夫から譲り受けたとはいえ、前夫の死後、ちゃんと相続登記をしているかどうかあやしいし、亡くなった前夫との記憶を刻んだ家を、やすやすと手放すことはできない。年寄りにとって引っ越しは、さまざまな事務手続きも含め、想像を絶する大仕事だ。
 また、たとえ新たな住居を提供されたとしても、人とまじわる縁側のない集合住宅の一室なら、幽閉に等しいとさえ思ったかもしれない。

 同居しているのは、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)夫婦。その息子の翔太(池松壮亮)。風俗まがいの店で働く亜紀(松岡茉優)。彼らは生活費の不足を初枝の年金と、治と翔太の万引きで補っている。治は冬のある寒い日、外で震えていた幼い女の子、ゆりを家に連れ帰る。

 ゆりを連れ帰る動機も、「寒そうにしていたから」というのは口実で、ひょっとして治はペドではないかと、最初はあらぬ想像をしてしまった。しかし、映画の進行とともに、徐々に登場人物ひとりひとりの人となりや背景事情が浮かび上がっていく。



「政治的正しさ」の押し付けがほとんど感じられない映画だ。貧者や子どもがこれ見よがしに美しく描かれるわけでもないし、実の母親が正しい存在として描かれるわけでもない。

 治のキャラクターは、『そして父になる』(2013)で同じリリー・フランキーが演じた斎木雄大と連続している。信代も含め、マシュマロテスト(→wiki)でロースコアを叩き出すタイプにみえるが、ハートがあって子ども好きで、家族を大切にしている。

  信代を演じる安藤サクラもじつに巧くて雰囲気が出ている。治と信代の年月を重ねた深い絆が、後半に明らかになっていく。

 百田尚樹や高須院長が映画についてなんか言ってたようだが、世界的に見てもアイデンティティ・ポリティクスに取りつかれたリベラルが大勢を占めるなか(→『破綻するアメリカ』)、生なましい身近な貧者にちゃんと寄り添うリベラルは、貴重かつ強力だ。それに気づかず、ただただリベラルの「ダメ」な部分にリアクションしているだけでは、保守に未来はないだろう。

 賢者は愚かな「味方」よりも、優れた「敵」に学ぶ。

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