【 キネマ旬報2019年8月上旬号 】
キネ旬8月上旬号。巻頭特集は、『君の名は。』の新海誠監督の新作『天気の子』。
監督をはじめ、プロデューサから作画監督、助監督・色彩設計、演出、音楽、声優にいたるまで映画に参画した主な人びとへのインタビューや対談によって、作品の制作プロセスを紹介してくれている。NHKの朝ドラ『なつぞら』では奥山玲子(→wiki)をモデルとした主人公の日常を通して草創期のアニメーション作成の様子を映像化しているが、こういうのはアニメ業界を目指す人にとっても具体的な仕事をイメージしやすくて、ためになるだろう。
作画監督・キャラクターデザインは、スタジオジブリ出身で新海作品初参加の田村篤。「制作に入る前に新海さんと一緒に神戸のRADWIMPSライブへ泊りがけでいかせてもらったんです」というエピソードがいい。監督と同世代というのもあろうが、初めて組む上でこういうのは大切。
新海はシナリオを作った後、(たぶんアフターエフェクツを使って)ビデオコンテをつくるという。自分で声優も務めるそうだ。そのうち美術館の新海誠レトロスペクティブでビデオ上映される日が来るかもw。美術監督の滝口比呂志が背景美術を担当し、助監督・色彩設計の三木陽子がキャラクターの配色を決め、撮影監督の津田涼介が撮影処理を作り込む。こだわりのディテール(今回は雨粒など)は、李周美率いるVFXチームが担当。
演出の徳野悠我と居村健治療のインタビューで、アニメ映画における演出の役割がなんとなくわかってきた。といっても(たぶん)、監督のスタイルによっていろいろ異なるのだろうな。
追悼記事で降旗康男(→wiki)が5月に亡くなったことを知る。『駅STATION』や『ぽっぽや』が有名だが、世代的に掲載されていたテレビでの仕事に目が留まった。まあ、複数監督だし、子どもだったので、当時は「これが降籏のシゴトかあ!」なんて全く思わなかったがw。
『キイハンター』、『俺たちの勲章』(75)、『夜明けの刑事』(主題歌までちょっとおぼえてるよ。ただ、wiki:『夜明けの刑事』やwiki:キイハンターに降籏の名前がないのはなぜ?)。
山口百恵主演の『赤い』シリーズ7作でも監督を務めていたという。たしか2作目の『赤い疑惑』で大ブレイクしたと記憶するが、個人的に最も好きだったのは1作目の『赤い迷路』(→wiki)。当時はドラマの良し悪しを決めるのは脚本!としか思わなくて、ジェームズ三木や佐々木守の名前を覚えたのだが、ドラマで松田優作が死ぬ間際、中野良子が口伝でタバコの煙を含ませようとするが、煙が漏れていくことで優作の死が表現される…なんていう演出には、子ども心にもグッときたものだ。子どもにとってアニメは必要だが、学園アニメばかりでなく、「大人になることへの憧れ」も必要だ。
降旗の仕事ではないが、『赤い迷路』のオープニングの音楽(wikiによると木下忠司(→wiki)のシゴト)と幾何学的に迷路を描くビジュアルはホント素晴らしかった。ただ、シリーズ的には3作目くらいまでかな?。高校にあがる頃にはばかばかしく感じるようになった。
降籏は劇場で観たのは晩年の『あなたへ』と『少年H』。場所は小倉昭和館。『居酒屋兆治』、『あ・うん』、『鉄道員』その他はTV放映で見ているはず。チャン・イーモウの『単騎、千里を走る』では高倉健の希望で日本パートの監督を務めた。
『淵に立つ』(→ブログ)の深田晃司へのインタビュー記事あり。新作『よこがお』の話のほか10月からはじまる『本気のしるし』でテレビドラマに初挑戦。テレビドラマの経験を踏むことはたいせつ。日本最大の映画会社が日本最大の興行チェーンをもっていることの弊害など、映画業界や行政の制度的な遅れを指摘。
京都アニメーション放火事件(→wiki)はなんとも痛ましい事件。京アニ作品は『涼宮ハルヒの憂鬱』だけ(しかもTV版をDVDレンタルで)しかみてないが、しばらく心が沈んでしまったよ。
あらためてアニメ制作環境の問題が指摘されるが、ほかにも吉本興業やジャニーズ事務所のマネジメント問題など、平成時代に変革を怠り、いつのまにか世界に遅れを取ってしまった日本の文化産業の制度的問題が、令和に移った途端いたるところでクローズアップされている。文化産業に限った話ではないが、マジで抜本的な改革が必要。
『ぼくのアメリカ映画時評』の渡辺幻と斎藤環がラース・フォン・トリアーの新作『ハウス・ジャック・ビルト』を取り上げている。そういえば『ニューズウィーク』でも紹介されていたな。斎藤環がゲンロンカフェで紹介していた(らしい)『ザ・ファブル』は劇場で観た。原作の力が強いが、柳楽優弥(→wiki)のチンピラ役はよかった。『ディストラクション・ベイビーズ』よりこっちのほうが役に合ってる気がする。
レビューでは『蟹の惑星』と『東京干潟』が取り上げられていた。最近、福岡の香椎海岸や北九州の曽根干潟に行って以来、干潟がマイプチブームなんだが、シンクロニシティ(→wiki)ってやつかなw。
『リヴァイアサン』のテイラー&パラヴェルによる『カニバ』がけっちょんけちょんw。
『神の耳を持つ男―録音技師紅谷愃一』第25回は『人間の証明』(→wiki)。なっ、懐かしいよう。やっぱり世代的にこのあたりの時代の映画が最も鮮烈な映画体験としてからだに残っている。しかし、高校から大学にかけてそういう自分を否定していく。
山村浩二と土居伸彰によるアヌシー国際アニメーション映画祭2019のレポート。長編コンペティションのクリスタル賞はジェレミー・クラバンの『アイ・ロスト・マイ・ボディ』、審査員特別賞はサルバドール・シモの『亀の迷宮のブニュエル』(スペイン=オランダ)。短編コンペティションはブリュノ・コレの『メモラブル』。山村が紹介していたトマーシュ・ポパクル監督の『酸性雨』(Acid Rain)は、アヌシー前週に開催されたザグレブ国際アニメーション映画祭のグランプリ受賞作。「CGと手描きを組み合わせ、レイブとネオヒッピーカルチャーを克明に描き、東ヨーロッパの終焉感に満ちた世界を表現」という紹介にそそられる。
日本のアニメ草創期から活躍する小田部羊一(→wiki)が来ていたらしい。
ワールドレポート・アジアでは、上海国際映画祭での管虎監督の最新作上映取り消し問題ほか政治に翻弄される中国の映画界について。
文中敬称略。
監督をはじめ、プロデューサから作画監督、助監督・色彩設計、演出、音楽、声優にいたるまで映画に参画した主な人びとへのインタビューや対談によって、作品の制作プロセスを紹介してくれている。NHKの朝ドラ『なつぞら』では奥山玲子(→wiki)をモデルとした主人公の日常を通して草創期のアニメーション作成の様子を映像化しているが、こういうのはアニメ業界を目指す人にとっても具体的な仕事をイメージしやすくて、ためになるだろう。
作画監督・キャラクターデザインは、スタジオジブリ出身で新海作品初参加の田村篤。「制作に入る前に新海さんと一緒に神戸のRADWIMPSライブへ泊りがけでいかせてもらったんです」というエピソードがいい。監督と同世代というのもあろうが、初めて組む上でこういうのは大切。
新海はシナリオを作った後、(たぶんアフターエフェクツを使って)ビデオコンテをつくるという。自分で声優も務めるそうだ。そのうち美術館の新海誠レトロスペクティブでビデオ上映される日が来るかもw。美術監督の滝口比呂志が背景美術を担当し、助監督・色彩設計の三木陽子がキャラクターの配色を決め、撮影監督の津田涼介が撮影処理を作り込む。こだわりのディテール(今回は雨粒など)は、李周美率いるVFXチームが担当。
演出の徳野悠我と居村健治療のインタビューで、アニメ映画における演出の役割がなんとなくわかってきた。といっても(たぶん)、監督のスタイルによっていろいろ異なるのだろうな。
追悼記事で降旗康男(→wiki)が5月に亡くなったことを知る。『駅STATION』や『ぽっぽや』が有名だが、世代的に掲載されていたテレビでの仕事に目が留まった。まあ、複数監督だし、子どもだったので、当時は「これが降籏のシゴトかあ!」なんて全く思わなかったがw。
『キイハンター』、『俺たちの勲章』(75)、『夜明けの刑事』(主題歌までちょっとおぼえてるよ。ただ、wiki:『夜明けの刑事』やwiki:キイハンターに降籏の名前がないのはなぜ?)。
山口百恵主演の『赤い』シリーズ7作でも監督を務めていたという。たしか2作目の『赤い疑惑』で大ブレイクしたと記憶するが、個人的に最も好きだったのは1作目の『赤い迷路』(→wiki)。当時はドラマの良し悪しを決めるのは脚本!としか思わなくて、ジェームズ三木や佐々木守の名前を覚えたのだが、ドラマで松田優作が死ぬ間際、中野良子が口伝でタバコの煙を含ませようとするが、煙が漏れていくことで優作の死が表現される…なんていう演出には、子ども心にもグッときたものだ。子どもにとってアニメは必要だが、学園アニメばかりでなく、「大人になることへの憧れ」も必要だ。
降旗の仕事ではないが、『赤い迷路』のオープニングの音楽(wikiによると木下忠司(→wiki)のシゴト)と幾何学的に迷路を描くビジュアルはホント素晴らしかった。ただ、シリーズ的には3作目くらいまでかな?。高校にあがる頃にはばかばかしく感じるようになった。
降籏は劇場で観たのは晩年の『あなたへ』と『少年H』。場所は小倉昭和館。『居酒屋兆治』、『あ・うん』、『鉄道員』その他はTV放映で見ているはず。チャン・イーモウの『単騎、千里を走る』では高倉健の希望で日本パートの監督を務めた。
『淵に立つ』(→ブログ)の深田晃司へのインタビュー記事あり。新作『よこがお』の話のほか10月からはじまる『本気のしるし』でテレビドラマに初挑戦。テレビドラマの経験を踏むことはたいせつ。日本最大の映画会社が日本最大の興行チェーンをもっていることの弊害など、映画業界や行政の制度的な遅れを指摘。
京都アニメーション放火事件(→wiki)はなんとも痛ましい事件。京アニ作品は『涼宮ハルヒの憂鬱』だけ(しかもTV版をDVDレンタルで)しかみてないが、しばらく心が沈んでしまったよ。
あらためてアニメ制作環境の問題が指摘されるが、ほかにも吉本興業やジャニーズ事務所のマネジメント問題など、平成時代に変革を怠り、いつのまにか世界に遅れを取ってしまった日本の文化産業の制度的問題が、令和に移った途端いたるところでクローズアップされている。文化産業に限った話ではないが、マジで抜本的な改革が必要。
『ぼくのアメリカ映画時評』の渡辺幻と斎藤環がラース・フォン・トリアーの新作『ハウス・ジャック・ビルト』を取り上げている。そういえば『ニューズウィーク』でも紹介されていたな。斎藤環がゲンロンカフェで紹介していた(らしい)『ザ・ファブル』は劇場で観た。原作の力が強いが、柳楽優弥(→wiki)のチンピラ役はよかった。『ディストラクション・ベイビーズ』よりこっちのほうが役に合ってる気がする。
レビューでは『蟹の惑星』と『東京干潟』が取り上げられていた。最近、福岡の香椎海岸や北九州の曽根干潟に行って以来、干潟がマイプチブームなんだが、シンクロニシティ(→wiki)ってやつかなw。
『リヴァイアサン』のテイラー&パラヴェルによる『カニバ』がけっちょんけちょんw。
『神の耳を持つ男―録音技師紅谷愃一』第25回は『人間の証明』(→wiki)。なっ、懐かしいよう。やっぱり世代的にこのあたりの時代の映画が最も鮮烈な映画体験としてからだに残っている。しかし、高校から大学にかけてそういう自分を否定していく。
山村浩二と土居伸彰によるアヌシー国際アニメーション映画祭2019のレポート。長編コンペティションのクリスタル賞はジェレミー・クラバンの『アイ・ロスト・マイ・ボディ』、審査員特別賞はサルバドール・シモの『亀の迷宮のブニュエル』(スペイン=オランダ)。短編コンペティションはブリュノ・コレの『メモラブル』。山村が紹介していたトマーシュ・ポパクル監督の『酸性雨』(Acid Rain)は、アヌシー前週に開催されたザグレブ国際アニメーション映画祭のグランプリ受賞作。「CGと手描きを組み合わせ、レイブとネオヒッピーカルチャーを克明に描き、東ヨーロッパの終焉感に満ちた世界を表現」という紹介にそそられる。
日本のアニメ草創期から活躍する小田部羊一(→wiki)が来ていたらしい。
ワールドレポート・アジアでは、上海国際映画祭での管虎監督の最新作上映取り消し問題ほか政治に翻弄される中国の映画界について。
文中敬称略。
スポンサーサイト
- [2019/07/26]
- 映画 |
- トラックバック(0) |
- コメント(0) |
- この記事のURL |
- ▲
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://travis7.blog54.fc2.com/tb.php/1000-82384b65
- | HOME |