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FIFF2019(1) 

 キャナルシティ博多のユナイテッド・シネマで開かれたFIFF(福岡国際映画祭)に行く。

 今年は昨年に引き続き、フィリピン映画が多かったような気がする。

 昨年2月にYCAMでラヴ・ディアスの『立ち去った女』(→ブログ)を観たとき、2本はキツイかな(なにぶん『立ち去った女』が4時間近く)と思って見逃した『ローサは密告された』のブリランテ・メンドーサ監督が来福。監督作品が2本上映された(うち1本は、ラヴ・ディアス、タヒミックとのオムニバス作品)。

 今回みたのは以下の5本。

 『それぞれの道のり』
 『アルファ 殺しの権利』
 『轢き殺された羊』
 『夜明けを待ちながら』
 『ナイト・ゴッド』

〇『轢き殺された羊』(原題:JINPA/中国/DCP/87分)
 監督は『オールド・ドッグ』(→ブログ)等で知られるチベット出身のペマ・ツェテン(Pema Tseden)。
 プロデューサーはキネ旬9月下旬号の1990年代外国映画ベスト10で『欲望の翼』と『恋する惑星』が選ばれたウォン・カーウェイ。舞台は標高5000メートルに及ぶ極寒のココシリ高原。概要はこちら(→wiki(英語))。
 主人公のジンパを演じるのはJINPA。日本でも1980年代までは確かに映画に映っていた男くさい武骨なルックスが好い。
 トラックを運転中のジンパはある冬の日、誤って羊を轢き殺す。弔うために遺骸を乗せて再び運転を続けるが、今度は同名ジンパを名のる青年を拾う。彼は20年前に殺された父親の敵を討ちにやってきたが、復讐を遂げられなかったという。ひょっとしたら、自分が誤って轢き殺した羊は、彼が遂げられなかった復讐の身代わりになったではないか……。
 カタログには画面のアスペクト比が1:1.85とあるが、スタンダードの間違いでは? IMDbの記載では1.33:1となっている(まあ1:1.33のことだろう)。トラックの運転席と助手席にすわった二人のジンパを映していても、ワイドスクリーンなら映るはずの両者の顔が、半分ずつしか映らない。映った半分ずつでひとりのジンパということだろうか。ただ、一部のシークエンスだけワイドスクリーンになる。 しかし、そこは画面の左右とも暗闇に近く、普通に考えればワイドにする必要性がないような場面だったりする。そういえば、ジャ・ジャンクーは『山河ノスタルジア』で、アスペクト比を変えることで時代の切り替わりを表現した。あえてやってることだろうが、正直、その意図が私には汲み取れなかった。ヴァジュラ・キラヤ(プルパ金剛)などチベット密教の言葉がさりげなく出てくるが、あからさまな宗教的イメージはほとんど登場しない。精神性の高い映画。


○『夜明けを待ちながら』(原題:Ten Seconds Before Sunrise/インドネシア/DCP/1:2.39/83分)
 監督は日本生まれのテディ・スリアアトマジャ(→wiki: Teddy_Soeriaatmadja)。『轢き殺された羊』とは打って変わって、都会的で世俗的な映画。
 東南アジア最大級のエレクトロニック・ダンスミュージック・イベント、DWP(Djakarta Warehouse Project)を取り上げ、ジャカルタの若者たちの生態を描いている。ドラッグの幻覚効果の描き方はなかなかユーモラスだ。

〇『ナイトゴッド』(原題:Nochnoi Bog/カザフスタン/DCP/1:1.85/113分)
 監督はアディルハン・イェルジャノフ(→Adilkhan YERZHANOV)。ストーリーをわかりやすく提示しないアート系映画で113分は正直キツイw。ただ、監督のサイトを覗いてみて他の予告編とか見る限りは、難解なアート映画ばかりつくっているような感じは見受けられない。日本では『世界の優しき無関心』がすでに公開されている。
 カザフスタンといえば、隣国のウズベキスタンやキルギスなどとともに「中央アジア」として一括りにされて紹介されるケースが多かったが、2015年に明石書店が『カザフスタンを知るための60章』を刊行。本書の59章によると、近年は「中央アジア5か国と日本との貿易総額の約7割をカザフスタン一国が占める」という。石油ガスにからむ日本との経済関係だけでなく、セミパラチンスク(→wiki)やアラル海等の環境問題や新首都アスタナ(1997~)建設など注目すべき点が多い。
 本作はディストピアSF的インスタレーション&彫刻的パフォーマンス映画とでもいおうか。彫像の首が上から降りてきたり、くるくる回ったり。灰色の羊。窓辺の白い鳩……。シェルターというセリフが出てきたりして核戦争後をイメージさせるかが、戸外のシーンが少なくない。
 過激派グループが、というセリフがあったが、イスラム過激派を連想させるようなことはしない。むしろ十字架が登場したりする。『カザフスタンを知るための60章』51章「社会問題」によると、カザフスタンは「政治的なイスラーム主義が強い力を持った歴史がないこともあり、過激派の影響を比較的受けにくい国と見られていた」が、21世紀に入って、シベリア出身の過激派説教師、サイード・ブリャツキー(Said Buryatsky)に影響される若者が増えており、2011年にはチュニジア人の指導者に率いられた「ジュンド・アル・ヒラーファ」によるテロ事件が相次いだ、という。

 FIFF2019(2)に続く。

 文中敬称略。

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