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「Phantom Exhibition~背骨のためのマテリアル」に行く。 

観客と共に
 コンタクト・インプロビゼーションで知られるスティーヴ・パクストン(Steve Paxton, 1939-)の身体思想を紹介する展覧会「Phantom Exhibition~背骨のためのマテリアル」を観にYCAMへ行く。Phantom Exhibitionはパクストンがベルギーの映像アーティスト、フローレンス・コリン(Florence Corin)、バプティスト・アンドリアン(Baptiste Andrien)と共同で制作した映像作品である。
 前後左右4面に天井の1面を加えた5面の巨大スクリーンに映像が映る。内容は体操/ダンスに、合気道や太極拳、ヨガ、ヴィパッサナー瞑想等のエッセンスを加えたパクストン独自の身体技法がベースとなっている。彼は自分の身体で普段目に入らない背骨や足の裏に注目し、特にスペイン語でコラムーつまり円柱ーと呼ばれる背骨が、どれだけ身体のさまざまな部位を支え、どれだけ人の動きの中心をなしているかを深く考えながらダンスを実践・指導している。そして、ダンスは体の可能性を多様に引き出すという。有機農業をおこない、ダンスで得たフォームを農作業で試したり、背骨を意識して雑草を刈ったりするらしい。環境問題にも関心が深く、関心ある人の一人としてカナダの科学者・環境活動家のディビッド鈴木(David Takayoshi Suzuki, 1936~)の名をあげている(以上、shiftのインタビュー記事より)。

 展示会場のスタジオBの前に掲げられたパクストンの略年譜が詳しくてわかり良い。マース・カニンガムの舞踊団に所属したこともあり、ジョン・ケージやロバート・ラウシェンバーグの思想に共鳴してジャドソン・ダンス・シアターやE.A.T.(Experiments in Art & Technology)に深く関わった人だそうだ。
E.A.T.は60年代にAT&Tベル電話研究所の技術者、ビリー・クルーヴァーが中心となってR・ラウシェンバーグやジョンケージらと共に発足させた運動組織だ。音楽、美術、ダンス、映像といった幅広いジャンルのアートを新しいテクノロジーと結びつける活動を続けたことで知られており、66年にはバックミンスター・フラーも参加した伝説的パフォーマンス"Nine evenings"を披露(パクストンはphysical Thingsという作品を展示)し、大阪万博の際にはペプシ館の企画運営までおこなっている。
アートとテクノロジーの融合に身体表現まで加わっているとなると、「アート⇔メディア⇔身体表現」を総合的なテーマとして掲げ、展示よりむしろ制作を重視してインターラボをもつYCAMにも、その思想が受け継がれているといっても誤りではないだろう。

 そういえば会期中の6月30日にピナ・バウシュが亡くなり、7月26日にはマース・カニンガムが亡くなった。パフォーマンスの一つの時代が終わったと言えるかもしれないが、同時に、アートとテクノロジーと身体表現が共に壮大な夢を見た60年代から40年以上を経て、新たな美学とテクノロジーによるトータルアートの時代が到来しつつあることを実感する。
太極拳
足裏_1 足裏_2
複数のダンサー
3 persons_1 3 persons_2 3 persons_3
骸骨 スティーヴ・パクストン
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