「煉獄の茶室」に入る。 

萩県立美術館
 県立萩美術館・浦上記念館に行く。
 ここは萩市出身の実業家・浦上敏朗氏が寄贈したコレクションをもとに1996(平成8)年に建てられた美術館。前回のブログでも紹介した丹下健三による建築。
 開催していたのは、海のシルクロードの出発点“福建”-沈没船、貿易都市、陶磁器、茶文化-展。マルコ・ポーロが『東方見聞録』で「世界最大の海港」と記した泉州ほか、福州や厦門といった名高い貿易都市を擁した中国東南の沿海部に位置する福建の海外交流の足跡をたどる展覧会。年表や説明書き等のテクストが詳しくて良い。
煉獄の茶室
 吉村芳生の「煉獄の茶室」は、2階の展示室から緩やかなスロープを下っていった折り返し部分の奥に設けられている。黒い板壁に据えてある赤いにじり戸を開くと、中は4畳半の茶室になっていて、上座の床の間には似顔絵の描かれた新聞の第1面が貼ってある。
 左右の壁には遠目で見ると写真の引き伸ばしかと見まごうばかりのケシの花の群生。よく見ると色鉛筆で花や葉の一つ一つがみっしりと描きこまれていて、その費やした時間と集中力の持続が想像されて武者震いする。構図としてはさほど「ピクチャレスク」とも思えない、庭先の自然を何の工夫もなくカメラに収めたようなこの花景を、なにゆえまたかくも凄まじい執心でもって描き写したのか「理由」が全く想像できない、「描き写す」ことへの強迫観念をまざまざと見せつけられる作品。

 昨年の県展で見た吉村の作品は、このケシの群生と、おびただしい数の自分の似顔絵(吉村は毎日、新聞の第1面に自分の似顔絵を描くことを習慣にしているという)、そして新聞第1面の活字や写真を手描きで細密に再現した作品だった。
 世代も表現方法も大きく異なる宇川直広(wikiへがかつてスタジオヴォイスで、共に「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展に出品されていた吉村芳生の作品に触れ、「新聞紙の細密なデッサンや内に秘めたサイケデリックな演奏をきちんと手を動かして具現化する作品にも興味がある」と言い、続けて「例えばアウトサイダー・アートと言われているものに、人はなぜあんなに心を鷲掴みにされるのか、それは他の誰のでもない、インディヴィジュアルな世界しか描かれていないからだよね」と語っていたのを思い出す。
吉村芳生
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