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坂出市沙弥島 

沙弥島
 坂出市沙弥島を訪れたのは、瀬戸内国際芸術祭2013の会場の一つで、しかもほとんどの作品が春会期にしか観られないと聞いたからだ。JR坂出駅からローカル線のバスが出ており、会期中はシャトルバスも運航していた。
 バスを降りた場所は埋立地で、瀬戸大橋の記念公園やグラウンド、駐車場が広がっている。大橋へと続く長大な高架橋の向こうには、赤白縞の煙突や円筒形のタンク等の工場施設が立ち並び、勢いよく白煙を吐き出すテクノスケープが展開している。暴走族なのだろうか、バイクや自動車のけたたましいエンジン音が耳を苛立たせる。
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 坂出市沙弥島はかつて塩飽諸島に属する島だったが、1967年に番の州工業地帯の埋め立て造成により地続きとなった。坂出と岡山を結ぶ瀬戸大橋の開設に伴い、記念公園が整備されている。

 須弥島では神戸芸術工科大学が讃岐特産の塩・砂糖・木綿、あるいはうどん粉・たいら貝をテーマにアートプロジェクトを遂行した。

 受付でマップをもらい、グラウンド付近に造成された小丘をのぼる。これは国際的に評価の高いイスラエルの彫刻家、ターニャ・プレミンガー(→Wiki)の『階層・地層・層』。香川県で産出される花崗土を盛って芝で覆い、螺旋状に小経を巡らせている。どことなく磯崎新の『百二十の見えない都市』に登場する「蝸牛都市」を想起させる。瀬戸内海――多島海(アーキペラゴ)――記号の海に浮かぶ「しま」。芝はまだじゅうぶん生長していないが、果たしてこれも春会期だけで撤収するのだろうか。
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 漁港の船溜まりを経て西ノ浜に出る。

 一直線に伸びる防波堤の彼方には春霞にかすむ島影。そして左方には、防潮堤にとまる海鳥の群れのようにガントリークレーンが立ち並ぶ港湾風景。

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 五十嵐靖晃のそらあみ
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 沙弥島・瀬居島・与島・岩黒島・櫃石島の漁師の協力によりワークショップで漁網を編んだそうだ。

 西ノ浜には藤山哲朗+冨井建築設計事務所が設計した海の家がある。セパ穴の光沢のある装飾やトイレのピンクタイルが可愛らしい。ただ、通気性はどうなのだろう。犬島精錬所美術館の三分一博志が下関市豊北町で坂野博行と共に取り組んだ海浜施設Running Green Projectは、環境建築として大きな話題を呼んだ。海の家は建築費も工夫次第で低く抑えられそうだし、若い有望な建築家に挑戦の機会を与える意味では最適な物件の一つなのかもしれない。
西ノ浜海の家2 西ノ浜海の家4 西ノ浜海の家5
西ノ浜海の家1 西ノ浜海の家6 西ノ浜海の家4
 Art&Eat Taroが考案したカメノテ入りの「千年スープ」を食す。
坂出市沙弥島6
 カメノテは写真のように海辺の岩礁に固着する甲殻類の一種で、地域によって食べる習慣がある。私も山陰で1回ほど食べたことがある。味は磯の味がしてまあまあ旨いが、身が少なく石灰質の殻まで噛んでしまいがちで食べ辛い。
 カメノテ以外にも餛飩(こんとん)や煮大豆、カブ、ワカメなどが入っており、調味料は昔塩のみ。餛飩(こんとん)はすいとんに似たもので、奈良時代に中国から伝わったうどんの原型のようなものだという。
 アートとして「食べること」を扱うというのも一考である。ブリア・サヴァランの『美味礼賛』や辻調理学校を築いた辻静雄、あるいは陶芸家で美食家の北大路魯山人の仕事を追いかける以外にも、食の探究にはさまざまなアプローチがある。少なくとも、「アート」と聞いても腰をあげないが「特別な食」と聞いただけで行列をつくる人が数多くいることは、知っておいて損はない。問題はそういう人たちをどこへ連れて行くか。


 西ノ浜から少し歩いてナカンダ浜にほど近い旧沙弥小・中学校へ。

 スリッパに履き替えて校内へ。
 廊下の天井から潮に揉まれて丸みを帯びた発泡スチロールのかたまりが多数吊るされている。これは戸矢崎満雄のインスタレーションで、沙弥島の浜辺に打ち寄せられた漂着物だという。窓の上部はオレンジ、下部はブルー、これは海面上と海中を表しているそうだ。
戸矢崎満雄1 戸矢崎満雄  

 順路に従って教室を覗くと、佐久間華による塩の結晶~落ちた玉汁 砂が吸ふた~。漁網を高濃度の塩水に浸けて塩の結晶を付着させた作品である。坂出でかつて親しまれた「塩田小唄」から着想を得たという。
佐久間華2 佐久間華1 佐久間華4  

 続いて大畑幸恵のカイソウ。貝層? 貝想? 回想・海藻・階層・改装と掛けているのだろうか。貝類は海藻を食べて生きる。貝殻を砕いてふるいにかけ、乳鉢ですって貝殻粉にするまでのプロセスを黒板に墨書しているのがユーモラスで良い。貝殻粉の色味や肌合いがじつに美しい。
大畑幸恵5 大畑幸恵2 大畑幸恵6
大畑幸恵1 大畑幸恵4 大畑幸恵3

 藤本修三の椅子として利用可能な椅子。
藤本修三1 藤本修三2 藤本修三3  
 ナカンダ浜からは瀬戸大橋がよく見える。島内には旧石器・縄文・弥生時代の遺跡や古墳等が散在していてナカンダ浜からも縄文時代の土器などが発掘されたそうだ。また、柿本人麿が立ち寄り、短歌一首「石の中に死(みまか)れる人」をみて短歌を作ったとされている。水――石――死(と再生)は瀬戸内芸術祭のテーマなのではないか。坂出出身の戦前の作家、中河与一が「柿本人麿碑」を建立している。
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 記念公園のなかには、谷口吉生が設計を手掛けた香川県立東山魁夷せとうち美術館が立っている。
 東山魁夷といえば昭和を代表する日本画家の一人で、心象風景にも通じる奥深い緑の山々を描いたことで知られ、ドイツロマン主義のフリードリヒを日本に初めて紹介したのも東山と聞く。
東山魁夷せとうち美術館1 東山魁夷せとうち美術館3
東山魁夷せとうち美術館3 東山魁夷せとうち美術館3

(以上、敬称略)
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