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李禹煥美術館/直島 

李禹煥美術館top
 豊島から四国汽船のサンダーバード19トンで直島に渡ると、迎えてくれたのはSANAA(妹島和世+西沢立衛)の「海の駅なおしま」(2006)。妹島は犬島で「家プロジェクト」を遂行中。西沢は豊島美術館の設計を手がけている。

 直島は今回が2度目だ。前回は2010年4月で、高松からフェリーで来てつつじ荘のパオに宿泊し、車に載せてきた自転車でベネッセハウスや地中美術館、本村の家プロジェクトに出かけたものだ。芸術祭の前だったので、人も少なく静かだったのを記憶している。
直島3 海の駅なおしま
 ちょうど南回りのバスが停まっていたのでさっさと乗り込む。瀬戸内芸術祭の成功が念頭にあるせいか、3年前に比べて人も家屋も立て込んできたように感じる。
 地中美術館前で降車。李禹煥美術館を目指してベネッセハウス方面にしばらく歩く。

李禹煥美術館13 李禹煥美術館1 李禹煥美術館6
 李禹煥美術館は、海へと続く谷あいにひっそりと佇んでいた。コンクリートの柱が地球上に刺さった1本の針のようにまっすぐそびえ立ち、周囲の空間に清冽な緊張感を与えている。付近に置かれた自然石は遠くから見ると点のようであり、床面に敷かれた鉄板とともに、作品「関係項-点線面」を成している。
 建物の入り口に向かって伸びる細いアプローチを歩いて広場に出る。
 海側に立つ鉄板とそれを間に挟んで向かい合う2つの自然石はタイトルが「関係項―対話」。互いが見えぬまま「対話」だけを口にする日韓関係が頭をよぎる。
李禹煥美術館7 李禹煥美術館9 李禹煥美術館2

 建物はアートサイト直島の第1の功労者である安藤忠雄。直線性を強調する鋭角のコンクリート壁が、観る者の心持ちを凛とした静謐さに差し向けている。
 壁面の左側から入るようになっていて、受付までの間には作品「関係項―しるし」がある。冷然とした打ち放しのコンクリート壁に、暖色のテラコッタがほんのりと温かみを添えている。
李禹煥美術館3 李禹煥美術館4 李禹煥美術館5

 受付を終えると、三角形に区画された中庭、「照応の間」に案内される。大きな一個の花崗岩と一角がわずかにめくれかけた一枚の鉄板からなる「関係項-合図」。李禹煥は著書『余白の芸術』(2000)所収の「無限について」で、私の芸術観は、一言でいえば無限への好奇心の発露であり、その探究である。無限とは、自分から出発して自分以外のものと関わる時に現れるものを言うと述べている。それはコンクリートに囲まれた硬質な空間や生い茂る周囲の緑、三角形に切り取られた空と相俟って観る者を「無限」へと連れていく。

 続いて屋内の「出会いの間」には、70年代の蒼い岩絵具と膠による「点より」「線より」の絵画シリーズに始まり、1992年の「照応」、2009年の「対話」など。『余白の芸術』では「無限を反復概念としてその限りない差異として表そうとした。そこでは他との関わりよりも、反復とズレに比重が置かれていた。が、八〇年代に入ると、やがてズレが大きくなるにつれ、絵画に余白が生ずる。絵画が成立する領域としての場に注目し、点や線などの照応関係によって無限感を引き出すことになった」と記している。
 中央には鉄板、ガラス板、自然石から成る「関係項」1968/2010。前掲書「石の発見」に登場する1968年秋に新宿の某画廊の入り口に置かれた作品だろうか。「物と空間、意思と偶然、行為と身体が張り合い呼び合って、見る者との対応の中で鮮やかな場所がもよおされたのだ」。

 順路に従って「関係項―沈黙」(2010)、「関係項―石の影」(2010)、最後に「瞑想の間」の「対話」(2010)。靴を脱いであがる。李禹煥が40年以上にわたって探究してきた無限性と対話できる時間が得られる。

 アリストテレスの可能無限と実無限、カントールの無限集合論等々、「無限」は昔から哲学者や数学者を惹きつけた深遠なテーマの一つである。サウンドアートの池田亮司も数学的無限と崇高をテーマにおいた。
 李禹煥の無限はそれらの「無限」とは異なり、思考の行き着く先の「無限」に「外部性」を導入しているのが特徴である。

直島4 直島2

 その後、ベネッセハウスミュージアムで国吉康雄展、杉本博司の『光の棺/苔の観念』等が見られるベネッセハウスパークツアーに参加する。それから徒歩で本村へ。途中、畑仕事をしていたお年寄りから「亀がいるよ~」と声を掛けられる。溜め池に近いあぜ道まで行ってみると、ミドリガメ(?)が数匹、列をなしていた。直島ではアート以外にも思いがけないものに遭遇できるのである。
 本村では、今年完成した安藤忠雄美術館。意外と小規模で奥ゆかしい。
ANDO_MUSEUM4 ANDO_MUSEUM1
ANDO_MUSEUM2 ANDO_MUSEUM3

 犬島精練所美術館を手がけた三分一博志の建築構想展。六甲山の自然体感展望台 六甲枝垂れは今後行ってみたい。芸術祭会期中の土曜日だけあって本村は人が多く、もう一度見たかったジェームズ・タレルの『南寺』も内藤礼の『きんざ』も予約一杯で立ち寄れなかった。
 この日は宮浦のドミトリー宿で一泊。大竹伸朗の直島銭湯は今回2回目。宮浦にセブン-イレブンができていて驚く。やはり2010年の芸術祭の成功が大きいのだろう。ほかにも若者の経営する簡易な飲み屋など、観光地の様相を濃くしてるが、それは決して否定的なことではない。
 宿では彼女と車で来たという建設コンサルと安藤忠雄の話で盛り上がる。アート造詣が深いというタイプではないが、現場に近い人で、コールドジョイントやセパ穴などコンクリート打設の具体的な話を面白おかしく解説してくれる。現場の話はやはり大切で面白い。
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