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あいちトリエンナーレ2013愛知県美術館 

 栄エリアは名古屋髄一の繁華街である。オアシス21の大屋根を掲げた吹き抜けの地下広場を通り抜け、愛知芸術文化センターに向かう。本館は県立美術館、芸術劇場、文化情報センター等からなる複合施設。アートライブラリーは約2万2000冊の洋書「タリカ・コレクション」を中核に、アート関連の公開図書館として全国有数の蔵書を誇っている。地下には東京時代ワタリウムからの帰途によく立ち寄ったアートショップNADIFFの支店、10階にはオレンジカウンティ在住時に何度か行ったカリフォルニア料理のウルフガング・パック(雰囲気がシックになったな)。

サンチャイルドNo2 サンチャイルドNo2
 フォーラムⅡにはあいちトリエンナーレ2013のシンボルにもなっているヤノベケンジの《サンチャイルド》。黄色いアトムスーツにパッチリまなこを具えた、まさにヤノベが言う「この状況に打ち勝つための、恥ずかしいくらいのポジティブ」を具現化した巨大な立像。

 メイン会場の10階では、まずは中国のソン・ドン(SONG Dong)《貧者の智慧:借権園》2012-2013。古い家具や椅子、机、人力車、鏡を配した展示室一杯のインスタレーション。借権園というのは「借景」と「借用権」の二つを掛け合わせているらしい。
SongDong2SongDong1

 続いてイギリスの彫刻家コーネリア・パーカー(Cornelia PARKER)《無限カノン》(2004)。暗い展示室の中央に立つ円柱の周囲に、プレスされた金管楽器が環状に吊るされている。トランペット、ホルン、チューバ、トンボーン……。かつてイギリスでは(日本でもそうだが)学校で吹奏楽が強く推奨され、金管楽器が数多く校内に蓄積したという。中央の柱に取り付けたライトに照らされて、それらは内側が黄金に光り輝くと同時に、展示室の壁に影と記憶を投影する。

 次の展示室は岡本信治郎《ころがるさくら・東京大空襲》。なんと!ヴェルフリ曼荼羅ではないか。球体に無数のお札を貼りつける強迫観念は日本特有のアール・ブリュット的繁殖性を示す。鮮やかな赤系統の色でみっしりと描かれた線画は、よくみると宙を駈ける戦闘機のイラストであったり、「米英を倒してつくる大東亜」や「学童疎開」「焼夷弾」といった戦争にまつわるテクストであったり、何かの人名だったり、古事記(?)の一節だったりする。足裏のイラストレーションには南無妙法蓮華経と縦書きで書かれ、「関東チクノミ来襲続いてシラミの大編隊鼻を通つてのど通過おへその廻りを旋回中おけつの穴に侵入し臭い臭いと退去する(学童疎開、シラミ取りの歌)などと添えられている。
岡本信治郎2 岡本信治郎1
岡本信治郎3 岡本信治郎4

 日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴは美学研究者や学芸員が、おもに高齢の美術家・美術評論家に生い立ちから現在の活動までインタビューした結果をまとめたサイトだが、その岡本信治郎オーラル・ヒストリー(2011年9月5日)に、岡本氏の経歴や戦争体験、美術関係者たちとの交流が詳しく語られている。特に戦争当時の記憶は生々しく、戦争を直接知らない世代の者たちが抱く戦争のイメージを激しく揺さぶることだろう。
 美術手帖 2013年 11月号 [雑誌]の横尾忠則インタビューで、1936年生まれ(つまり終戦を迎えたのは9歳)の横尾氏が神戸から数十キロ離れた土地にいながら神戸大空襲で空が真っ赤に染まるのを見た時の記憶をたどり、「僕にとっての戦争は、そこから恐怖を外してしまえば、実はある意味でファンタジーの世界でしたね」と綴っているのが印象的だった。横尾氏より3つ年上の岡本氏は、日米開戦に至るまでの記憶も鮮明で、現存する美術家として戦争の恐怖を目の当たりにした数少ない存在になりつつある。高校時代の先生の一人で美術評論家の針生一郎氏(当時はそりが合わなかったらしい)は2010年に泉下の人となった。

 展示室は「アール・ブリュット」的な雰囲気が充満していて、反対側の壁には、伊坂義夫、大坪美穂、岡本信治郎、小堀令子、清水洋子、白井美穂、松本旻、山口啓介、王舒野、PYTHAGORAS3(覆面作家)《地球・爆ーEarth Attack》(2013)が展示されていた。これは2001年9月11日のアメリカ同時多発「テロ」をきっかけに岡本氏が企画提案し、2003年に画家10人と評論家10人で構想した共作絵画プロジェクト。メンバーのひとり、山口啓介がプロジェクトに参加した経緯や思いを綴ったテクストがこちらにある。
EarthAttack1 EarthAttack2
EarthAttack4 EarthAttack3

 その後、アーノウト・ミック(Aernout MIK)《段ボールの壁》(2013)、石上純也の《little gardens》(2007)と続いた後、ヤノベケンジのコーナーへ。
 ヤノベは90年代にガイガーカウンター付のアトムスーツを着用してチェルノブイリを訪れるプロジェクトをおこなったように、福島第1原発事故の前から放射能の問題、テクノロジーと終末論の問題に対峙してきた。そのヤノベの《アトムスーツ・プロジェクト:保育園4、チェルノブイリ》(1997)や、《サン・チャイルド島》プロジェクトの構想模型、《クイーン・マンマ》(2011)《ウルトラ・サン・チャイルド》(2013)などが展示されている。クイーン・マンマは禍々しいピースマークみたいで好きだ。
ヤノベケンジ4ヤノベケンジ1
ヤノベケンジ3ヤノベケンジ2

 続いて中国のハン・フェン(HAN Feng)の《浮遊する都市 2011-13》。水墨画を学んできた人のようで独特の幽邃感がある。大地震で「液状化」する大地に対し、都市化により集積したおびただしい量の人工物は天上の「数理」により設計され構築され、いわば吊るされて揺れ動く。
HAN_Feng1HAN_Feng2
HAN_Feng4HAN_Feng3

 都合により8階の展示は急いで回ることになった。印象的だったのは、1996年のヴェネツィア・ビエンナーレに阪神大震災の瓦礫を用いた作品で金獅子賞を受賞した宮本佳明の《福島第一原発神社》(2012)と《福島第一さかえ原発》。そして、フィンランドのミカ・ターニラ(Mika TAANILA)による《フィンランドで最も電化した町》――フィンランド南西部のオルキルオト島に2014年完成予定の原発「オルキルオト3」を撮影した作品。同島には、原発から出る使用済み核燃料を10万年にわたって地中深く封印するための施設、オンカロがある。
 オノ・ヨーコの《光の家の部分》は見逃す。
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