大友良英コンサート@YCAM 

 大友展のクロージングライブに行く。過去2回のライブも鑑賞したが、オールドタイプのノイズファンの私には、今回のライブが最もノイズらしくてあらためて大 友ワールドを堪能できた。かつてノイズといえば、ただただ音響の洪水的なものが多くてしばしば退屈したが、大友のノイズはとにかく飽きさせない。いろんな 音の引き出しをもっている。ノイズファンが期待する音の「快」を熟知しているのだ。あらゆる音楽ジャンルのイディオムから解放された音響デザインに惚れ惚 れした。

 第1部は韓国から来た3人とのセッションで、皮膚を引き裂き肉をかきむしる強音ノイズ。クリスチャン・マークレイも好んで使ったというアメリカのいかついタ ーンテーブルを用いたり、CDやHDDの回転を遮って軋り出る音を拾って処理したりといったもの。繊細さとは無縁な私の耳には、弱音系ノイズよりこうしたア ナーキーな音が似合っている。音が聴覚領域を突き抜けて視覚領域にまで侵襲したかのようで、ありえないはずの音源の視覚イメージが脳内を暴れまわ り、ときには内臓にまで襲い掛かる。
YCAMホワイエ 第2部はwithout recordsのプレーヤーが林立するホワイエ。集まってきた人の多さに感動する。日本の外れの山口にこんなに多くのノイズファンが集合するとは、未来は明る いというか世も末というか。プレーヤーの袂に腰を下ろしてリラックスする姿は屋内なのにまるで野外のノイズキャンプだ。ここでも強音系ノイズがメインで、こ れまでのライブでやや感じられた「共演者たちの持ち味重視路線」でなく、ワシの音を聴けとばかりに炸裂する大友節が豪快だ。
 第3部は高嶺格のorchestras作品が天井から多数吊るされたスタジオAで、山本精一ほかアジアのミュージシャンたちとの共演。スタジオB→ホワイエ→ スタジオAと会場が移っていくコンサートスタイルは実に新鮮で、YCAMスタッフの強い協力体制があってこそ実現できたことが窺われる。
大友良英  ここは大友の発する音だけに集中させてもらった。碁石やボタンを落とし、ペットボトルを振り、突起のあるガラス管を鳴らし、ターンテーブルの擦れる音を 拾い、ツマミを調整し、ドラムを叩き、セロハンテープを引っ張る音まで駆使して各モノがもつ個性的な音を引き出して提示する。どうしてこんな音に惹かれ るのか分からないが否定しようもなく快い。自分が同じようにやってみてもとうてい出せない心地よい肌触りの音の連続だ。
 池田亮司が精米歩合50%未満の大吟醸なら大友のノイズは古酒とマオタイ酒とシャンパンを混ぜたような野味たっぷりの酒だ。しかしそれは適当にブレ ンドされたものでは決してなく、さながら熟練した錬金術師が一生かけて創り出したエリクシルを含んだ最高の美酒だ。

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