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LIFE-WELL/坂本龍一+高谷史郎 

LIFE_WELL_top
 山口市の野田神社で坂本龍一と高谷史郎が手がける「LIFE-WELL」のインスタレーションが展示されるというので行ってみた。
 野田神社は長州藩最後の藩主、毛利敬親を祭神とする神社で、七尾山トンネルに近い鎮守の森にある。山口市内に住んでいた頃は、隣に立つ菜香亭でいくつか催しに関わったもので、神社にも1度か2度立ち寄ったことがある。住所が天の花と書く「天花(てんげ)1丁目」というのがちょっぴり風情があって良い。
野田神社 野田神社

 野田神社の最初の鳥居をくぐった右手には、毛利氏の後裔・毛利元昭公が昭和11年(1936年)に建立した野外能楽堂がある。この年は中谷宇吉郎(中谷芙二子のお父上)が世界で初めて人工雪の製作に成功した年である一方、226事件が勃発し、日独防共協定が締結された年でもある。
野田神社野外能楽堂 野田神社野外能楽堂
 東京の社寺建築設計事務所・小林建築が設計と監理を手がけたこの能楽堂は、総檜づくりで建築面積およそ238平米、全国的に見ても大規模で本格的な野外能楽堂の一つだと言われている。乗越たかおの『ダンス・バイブル---コンテンポラリー・ダンス誕生の秘密を探るで、明治政府は町民文化の「歌舞伎」を厚く保護し、武士の文化であった「能」に冷たくしたという話を目にしたが、武士の時代を終わらせた維新に際し、率先して藩籍を奉還した毛利敬親に敬意を表し、武士の芸能たる「能」を奉納する場所を設けたのだろう。
 この11月2日(土)には高谷史郎総合演出でインスタレーション・ライブがおこなわれる予定だという。

野田神社 野田神社
野田神社絵馬堂 野田神社
野田神社 野田神社絵馬堂
 社務所を右手に見ながら階段をのぼると、2つ目の鳥居の右方に絵馬堂がある。その向こうに広がる古池に白い霧が立ち込めている。これが「LIFE-WELL」に違いない。2010年の CLOUD FOREST/中谷芙二子+高谷史郎に似ている。係員にもらった解説によると、CLOUD FORESTのために高谷がデザインした霧ノズルユニットを古池中央の底部に配置して人口霧を発生させ、太陽の軌道をトラッキングするようにプログラムされた鏡が、反射光を古池の霧だまりに照射するのだという。霧の香りは人工的だが、それでも生い茂る樹木を潤しながらゆっくりと立ちのぼっていく白い霧は、鑑賞者に水霧に似た情動を誘発する。

野田神社LIFE_WELL LIFE WELL
 坂本は現在、YCAMで「Forest Symphony」というプロジェクトを遂行中だが、このプロジェクトは山口市内の中央公園、出雲神社、熊野神社のほか、宮崎県諸塚村札幌メディア・アーツ・ラボ、伊藤穰一が所長を務めるアメリカ・ボストンのMITメディアラボ、オーストラリアのパースにあるバイオアートの研究拠点SymbioticA等に設置した特殊なセンサーデバイスで、樹木に流れる微弱な生体電位を計測し、ネットワーク経由でサーバーに送信された電位データを一定ルールに沿って音楽に変換する試みである。センサーデバイスは、YCAMのInterlabが開発したものだ。
 「LIFE-WELL」では「Forest Symphony」で生成したサウンドデータの一部を、霧の量や位置を解析するセンサーからのデータによって変動させることで、両作品を繋ぐ音響世界を生起させている。
LIFE WELL 野田神社LIFE_WELL
 水の張っていない枯池の底に築かれた三角形の石組は、もとからあったものに違いないが、何やら不思議な雰囲気を醸している。
 樹木のささやきを想わせる繊細な肌触りの電子音と、生々流転を体現する人工霧が相俟って、 梢の間に近所の民家が垣間見える里の小さな鎮守の杜が、あたかもアンドレイ・タルコフスキーの映画の1シーンに変容したかのような錯覚に包まれる。あれは『ノスタルジア』だったか『鏡』だったか、昔みた限りなので定かでない。YCAMでは音楽家・坂本龍一が音と音楽に焦点をあてて選定した映画を11月8日から上映し、その皮切りにタルコフスキー特集が組まれるというので、そちらにも出向いて確認したほうが良いかもしれない。
 名古屋トリエンナーレでミケランジェロ・フランマルティーノ(Michelangelo Frammartino)の映画『4つのいのち』を観てぼんやりと思ったことだが、昔から東西を問わず「魂」と呼ばれてきたものは、ある種の音響パターン、というか、音響や視覚的形態に限らずあらゆる生命パターンを環境との相互作用で産出する「包括的なパターン」なのではないか。山口に戻ってきて、再びちょっとそう思ってしまう刹那を得た。

以上、敬称略。 野田神社
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