『日経サイエンス』2017年5月号 

 『日経サイエンス』2017年5月号は、表紙裏に産総研の広報記事。JSAI2016で開会挨拶をしていた辻井潤一が率いるAIRCは、司令塔となる「人工知能技術戦略会議」のもと、理研革新知能統合研究センターや情報通信研究機構と連携して研究開発を行っている→(→NEDO:AIポータル)。今後は2018年稼働予定の「AI橋渡しクラウド(ABCI)」との連携も進める予定。

 挑むフロントランナーではPEZY Computingの齊藤元章社長を取り上げる。曰く「今の1000倍高速なスパコンができると、データから抽出したパターンから新しい法則を自分で見つけられるようになる」「スパコンで科学の仮説を立て、スパコンで検証する時代になる」。これはICF2016での北野宏明のプレゼンにも通じる話。量子ニューラルネットワーク技術を発表した国立情報学研究所の山本喜久(ImPACT プログラムマネージャー)らと研究協力を進めている様子。

 NewsScanでは、シンシナティ小児病院医療センターのチームが、ヒト幹細胞から神経細胞を含めた機能する腸管の成長に成功した件など。

 第1特集のスタージェット計画は、ユーリ・ミルナー(→wiki)が資金援助し、ホーキングらが顧問として参加する、ケンタウルス座α星に宇宙線を送り出す計画。この構想で用いられる予定の宇宙ヨットは、強力なレーザー光を帆に受けて推進する。これは2010年に日本が打ち上げた「イカロス」で基本技術が実証されたもの。

 第2特集は言語学の新潮流
 M.トマセロP.イボットソン(英オープン大学)による「普遍文法は存在しない」。チョムスキーの普遍文法仮説は、言語学のフィールド調査による反証を受けて何度か改訂され、2002年には「計算的回帰性(再帰性)という特徴だけをもつ普遍文法を示した。「回帰的な埋め込み構造を作れるという能力が言語をほかのタイプの思考(カテゴリー化や物事の関係の認識など)と分けている特徴」であり、この能力が10~5万年前の間に起きた単一遺伝子の変異から生じた、と唱えた。しかし、回帰性なしで済ませるアマゾンのピダハン語などの例外が指摘されている。

 チョムスキー説の基本的欠陥は「子供が文を生成する能力を、抽象的な文法規則を用いて獲得すると想定していること」だとして、普遍文法説に代わる「用法基盤モデル(Usage-Based Model)」の優位性を示す。これはつまり、子供は言語専用でない、一般的な認知能力や他者の意図を理解する能力を用いて言語を習得しているという見方だ。(原文はScientific American 2016年11月号だが、これは一見、トマセロが2003年にConstructing a Language: A Usage-Based Theory of Language Acquisitionで唱えた説の要約でしかないようにも読めるが、何か新たな知見が加わったのかな?)。

 その他、キログラムを再定義する話や麻薬依存をイボガインで治療する話など。

 文中敬称略。

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