ナショナルジオグラフィック2017年4月号 

 特集は「テクノロジーで加速する人類の進化」。テクストはジャーナリストのD.T.マックス。
 冒頭では、先天性の全色盲で、光の波長をとらえて振動に変換する電子装置を外科手術によって頭部に導入したニール・ハービソン(Neil Harbisson)を紹介。
 これまでの進化は、ある特徴が偶然に現れるのを待ち、繁殖を通じて子孫にその特徴を広めていくという悠長なものだったが、今やテクノロジーが進化に匹敵する役割を果たしている。
 ニック・ボストロムとカール・シャルマンは2013年に「10個の受精卵のなかから「最も知能の高い」卵を選んで母体に戻せば、子どものIQは偶然に任せる場合より11.5ポイントほど高くなる」という趣旨の論文を発表。論文では、6ヶ月で精子や卵子になるES細胞を使えば遥かに短期間で同様の結果が得られる可能性にも触れている。但し、「最も知能の高い」といっても、知能は計算能力や空間認識力、分析的思考、共感力など複数の要素からなり、それぞれの特徴に複数の遺伝子が関与しているため、選別は困難を極める。
 しかし、CRISPR-Cas9により、迅速かつ正確にDNAの特定の配列を編集できるようになった。MITのジョージ・チャーチは豚の臓器を人間に移植するために豚の受精卵を改変する試みを行い、MITメディアラボのケビン・エスベルトはライム病の病原菌を運ぶネズミのゲノム改変に取り組み、アンソニー・ジェームスはナショジオ2016年8月号に書いてあったように、マラリア原虫を媒介しない蚊を作り出し、中国の研究チームは人間の欠陥遺伝子の修復にまで着手した(失敗に終わったが)。
 国際的な取り決めで、人間の遺伝子に次世代に受け継がれる変更を加える治療は一時的に停止されたが、クリスパー以外も含めて遺伝子治療の実験は2300件も進んでおり、遺伝子改変の流れはもはや押しとどめられない状況。2016年には米国のバイオビバ(BioViva USA)のCEOエリザベス・パリッシュが、当社開発の遺伝子治療を受けて身体の老化に一部逆行させたと発表(→わたしは遺伝子治療で20歳若返った:Wired 2016.5.6)。
 テクノロジーを身体に埋め込む試みも、冒頭の例だけではない。デンジャラス・シングズ(Dangerous Things)社はRFIDを自分の身体に埋め込むキットを販売中。
 著者は、「人の暮らしは、どこまでが生物本来の営みで、どこからがテクノロジーによるものか、区別がつきにくくなった」と〆る。

 ニール・ハービソンの話はTED(→僕は色を聴いている:ted2012年6月)にある。

 ジャーナリスト、ジェームズ・ベリーニによる「イラク ISの爪痕と生きる」。
 IS指導者アブバクル・バグダディがアルカイダから絶縁されたのは、その残虐性がアルカイダでさえも容認しかねるものだったから。しかも、アルカイダが欧米帝国主義を最大の敵と考えたのに対し、バグダディは彼からみると「信仰心の薄い」イスラム諸国、特にシーア派を敵視しているという。ちなみに写真はマグナム・フォトに所属し、世界報道写真賞も受賞したモイセス・サマン(Moises Saman)。

エチオピア 草原に生きるゲラダヒヒ」は環境ジャーナリスト、クレイグ・ウェルチの文。
 最近は、TVアニメ『けものフレンズ』の影響で?、アニオタたちの間でも動物園が人気らしい。私も2月に宇部の常盤動物園で多種多様のサルを見て気に入ったが、動物、特にサルは人類に近いだけあって、何かにつけて人間との類似性や差異を発見できて面白い。TVの動物番組を見るより、自分の目で動物の一つ一つの動きを観察する方が遥かに楽しい。『森を考える』のエドゥアルド・コーンの話や、あるいは京大総長の山極寿一wiki)の話など、京大霊長類学会の知見が、リアリティをもって迫ってくる。
 ほかにも、米国アラスカ州の先住民ユピックの記事(温暖化がもたらす凍土融解による文化遺物の危機)やパキスタンのゴジャール地方、ローリ・ニックスとキャサリン・ガーバーのアート作品「誰もいない世界」など。
 最後の「日本の百年」は、1949年頃の紙芝居の様子を取り上げている。

 文中敬称略。
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