映画『ティメー・クンデンを探して』 

 福岡シネラの6月は、中国インディー映画特集。ワン・ビン(『三姉妹~雲南の子』(→ブログ))の『無言歌』(2010)と『収容病棟』(2013)、ジャ・ジャンクーの『罪の手ざわり』(→ブログ)と『山河ノスタルジア』その他を上映。

 今回はペマ・ツェテン監督の『ティメー・クンデンを探して』と『オールド・ドッグ』をみる。

『ティメー・クンデンを探して』(2009)は、チベット人スタッフがチベットだけで撮影した初の映画作品。スタッフロールも含め、チベット語や英語表記はあっても中国語表記は皆無。チベット文字は、日本のお墓の卒塔婆に刻まれる梵字と同じくブラーフミー文字が起源だ。



 内容としては、チベットの古典歌劇『ティメー・クンデン』をモチーフとした映画を製作するため、映画関係者たちがチベット歌劇を演じられる理想的な俳優を求めて、車で旅をするというロードムーヴィーだ。

 映画スタッフたちは、広大なチベット高原の村々や寺院を訪ねて回る。村芝居の役者たちにチベット歌劇の経験を尋ね、盲目のバラモンの要求に応じて自分の両眼をえぐり取って布施を実践するシーンを演じてみせてと依頼する。
 ある村では、都会に出ていった恋人とかつてティメー・クンデンを演じていたという歌の上手な娘と出会い、道づれに加える。車内では、出資者?の社長サンが昔、メガネっ娘に恋をした思い出話をとうとうとしゃべり続ける。
 僧院の子どもたちにノートパソコンをみせるくだりもユーモラス。

 ほとんどが固定カメラによる長回しで、柱などの縦のラインはスクリーンの枠に対してほぼ垂直。前方に誰かが立っていて停車すると、車内から出演者が降りて前に立った人のところまで行って会話するまで、フロントガラス方向を向いた一台の車中カメラがずっと撮影している。冒頭の場面など、男がしばらくの間、じっと突っ立ったままで微動だにしないので、かすかな鳥の声がなければ映写機が停まったのかと勘違いしてしまいそうだ。

 チベット高原は余計な人工物が少なく、村落も伝統的な土壁の住居であるため、色彩に統一感が感じられる。緑に乏しいくすんだ茶系の大地や男たちの地味なジャンパーに混じって、同乗する娘の、顔の下半分を覆うスカーフのピンクがひときわ印象的。

 劇伴はないが、各村の役者たちによる伝統的な謡いや歌酒場、カーステレオから絶えず流れる間の抜けたような歌謡曲など、歌に溢れているのも魅力的だ。

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 チベットは昔、訪ねたことのある懐かしい地域だ。アムド地方は、青海省ゴルムドから乗ったラサ行きのバスで途中、宿泊のために立ち寄っただけなので全く憶えていないが、チベットでは都市や集落以外はおおむね以下のような景観が広がっていたように記憶する(前週の(→映画『エル・マール・ラ・マール』)といい今回といい、今月は懐古月間だなw)。

チベット高原

ソノラ砂漠と同様の空漠感があるが、標高、地質、わずかな植生も異なる。
チベット高原

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