『陽に灼けた道』byソンタルジャ 

 福岡シネラでソンタルジャ監督の『陽に灼けた道』(2010/ビデオ)。

 舞台は見渡す限り地平線が広がるチベット高原。遥か彼方まで延びる舗装道路は、ごくたまにトラックが走るだけ。
 チュパ姿で歩き続けるチベット青年の頬を、太陽が容赦なく照りつける。アスファルトは陽光をはね返すが、大地は陽光を吸収する。標高4000メートルを越えるチベット高原では、昼間は灼熱の太陽に焙られるが、夜は芯から凍えるほどの寒さだ。
 主人公ニマは結婚を控えたある日、トラクターで誤って母親を轢き殺してしまう。故意ではなかったにせよ、罪の重さに耐えられず、彼は婚約者を残してひとり、ラサまで贖罪の旅をする。「車だと速すぎる」と言う彼は、広大無辺の大地をひたすら歩き続ける。

 ラサからの帰途につくニマに、一人の老人が声を掛ける。娘の結婚式を終えて、もはや人生の目的を失った老人は、彼とともに歩くことにする……。



 映像はとてもストイックだ。タルチョやストゥーパが少し映るだけで、チベットの観光資源であるポタラ宮殿やジョカンなどラサ市街の様子を映さない。ラサへの巡礼といえば五体投地だが、それをおこなう少女の姿がごくわずかに映るだけ。監督は「宗教的な救済の物語」を拒否しているという。組織的な儀礼と形式ばかりが発達した宗教では、個人的な救済は困難なのだという意味だろうか。セリフの数も少ない。
 ニマのすべててを喪ったような表情が素晴らしい。演じるのはイシ・ルンドゥブ(Yeshe Lhadruk)。

 監督のソンタルジャ(Sonthar Gyal)は、ペマ・ツェテン監督の『ティメー・クンデンを探して』(→ブログや『オールド・ドッグ』(→ブログ)等で撮影監督を務めてきた人。『陽に灼けた道』が海外の映画祭で高く評価され、今年、新作の『草原の河』が全国公開。
 福岡ではKBCシネマで7/8~7/14公開予定。公式サイトはこちら(→配給会社ムヴィオラ:『草原の河』)。



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