映画『レミニセンティア』 

 下関市細江町にあるシネマ・クロールで井上雅貴監督のデジタル映画『レミニセンティア』を観る。

 舞台はロシアのヤロスラブリ。モスクワから北東250km、ヴォルガ川に面した人口約60万人の都市だ。前駆受洗イオアン大聖堂や預言者イリヤ聖堂のある歴史地区は、ユネスコの世界遺産にも登録されている。また、映画に登場する通り、史上初の女性宇宙飛行士ワレンチナ・テレシコワの宇宙記念館がある。


 主人公は記憶を消す能力をもつ初老の男ミハエル。彼は幼い一人娘ミラーニャとともに暮らしている。ミハエルのもとには、思い出したくない記憶を消し去りたい人びとが集まってくる。彼は依頼人から消し去りたい記憶についてインタビューする。そしてそれをメモして小説の形にまとめている。ところが、謎めいた隕石が降る夜に……。

 映像は観てて心地よい。タルコフスキーの『ソラリス』や『ストーカー』、ソクーロフの『日陽はしづかに発酵し』など、ロシアの伝統的なSF映画の香りがする。
 もともと広大なロシアの大地には、アメリカ内陸部と同様に、地球が惑星であることを深く感じさせる雰囲気が漂っている。ソ連時代に建てられた20階建て?くらいある巨大な集合住宅が目を引く。無機的かつレトロフューチャー的とでもいおうか。
 第2次世界大戦の戦災で深刻な住宅不足が生じたソ連では「フルシチョフの時代に、標準設計による集合住宅の大量建設を、全世界に先駆けて大きく推進させた」(『「鉄学」概論』原武史)。日本の団地もソ連の集合住宅の影響を多分に受けている。ほかにもガス工場などが映っていて、大山顕ワールドが好きな人にはオモシロイかもしれない。

 ストーリーは韜晦で、限りない解釈に開かれている。とはいえ、考え抜かれた結果としての韜晦さというより、ストーリーへの希薄な関心に由来するようにも感じられる。

 サウンド方面はほとんど力が入っていない。不確かだが、たぶん市販の効果音素材を使っているのではないか。

 井上監督はソクーロフの映画『太陽』でメイキングを手がけた人。



 パンフレットにも手作り感がある。著名な映画ライターによる解説や監督インタビューはなく、ある種の"メイキング"で構成されている。

 映画スタッフは監督のほか監督の妻(プロデューサー)と娘(出演者)と弟(助監督)。持参したカメラはパナソニックのGH3を2台(メインとバックアップ)。録音機材はなく、2chしかないカメラの録音機能を使用。そのためセリフを口にできるのは2人に限定される。この限定的な条件からシナリオを作っていったようだ。つまり、普通の劇場映画とは全く異なる作り方がされている。

 低予算の手作り映画でも、工夫次第でこれだけのことができるという良い見本になっている。

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