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『RIVER OF FUNDAMENT』(1) 

 YCAMスタジオAで開催された爆音映画祭2017で、マシュー・バーニーとジョナサン・ベプラーのオペラ映画『RIVER OF FUNDAMENT』(2014)を観る。

『クレマスター』のときはあれだけ盛り上がっていたのに、今回はあまり話題に上っていないようなので、前日まで観に行こうかどうしようか迷っていたが、結果的には観て正解だった。
 トム・クルーズ主演の『ザ・マミー』(→ブログ)をみて石上玄一郎の『エジプト死者の書』を古い書棚から引っ張り出して読んだのは、意識の奥底に降りてきた"アートの神さま"のお導きだろうか。すっかり忘れていたエジプト神話の概要をおさらいしたことは、本作の内容を把握するうえで大いに役に立った。たとえばレタスを齧るシーンで彼(Eugene Perry)がセトか…と見当がついたり、とかのレベルだが^^;

 本作はノーマン・メイラーとマシュー・バーニーによる『アメリカ 死者の書』だ。そこには死と再生、霊魂の思想、転生輪廻が描かれている。

 メイラーといえば昔は誰もが読む大作家の一人だったが、今の若者には馴染みが薄いだろう。山西英一訳で全集全8巻が出たのが1969年。彼はその後も数多くの本を世に出したが、全集になっていない。思い出せるのは、村上春樹の影響で90年代になってから『死刑執行人の歌』(1979)が話題になったことくらいか。

 ノーマン・メイラーは1923年生まれ。マーティン・スコセッシが映画化(→ブログ)した『沈黙』の作者、遠藤周作と同い年だ。今年が100周年となるロシア革命の勢いに熱狂し、猛威を振るうコミンテルンに期待を膨らませたが、ユートピアのはずだったソ連がスターリンの独裁でディストピアと化していくさまを青年期に見届けた。ヘミングウェイに憧れ、戦記文学を書きたいという一心から対日戦争に従軍し、『野火』(→ブログ)の舞台にもなったレイテ島やルソン島を転戦し、1945年9月~46年5月まで日本(小名浜や銚子など)に滞在した(小名浜について「兵士たちの言葉」という短編小説を遺している)。その従軍経験をもとに書いたのが、ベストセラーとなる『裸者と死者』(1948)。50年代にはヴィレッジ・ボイスを共同設立し、ニュージャーナリズムの旗手となり、カウンターカルチャーを先導した。1957年に書いた「ホワイト・ニグロ」というエッセイは、ビートニクの作家たちを称揚して、読書界にセンセーションを巻き起こした。一方、モハメッド・アリのマラソンに付き合い、6人の女性と結婚し、うち一人を泥酔のうえ刺したりもした。



 第1幕では、ノーマン・メイラーのメモリアル・パーティに集まる弔問客の会話や音楽演奏が展開する。ジョナス・メカス(→wiki)が現れ(本人かな?)、スーザン・ソンタグやゴア・ヴィダル、ジャック・アボット(wiki:Jack Abbott(author))といった懐かしい固有名が会話のなかに登場する。
 後に執行される自動車の解体儀式を予示する飴色の豚の丸焼きが運ばれ、蟲のサラダが用意され、マシュー・バーニーとエミー・マランス(wiki:Aimee Mullins)扮する汚物まみれのカー(エジプト神話の精霊)が現れて、ノーマン1世の霊(演じるはメイラーの実際の息子ジョン・バッファロー・メイラー)を導く。
 舞台はロサンゼルスに転じる。ハイウェイを走る大量の自動車は、無数に湧くコクゾウムシのようだ。クライスラーのRENディーラーに打楽器や金管楽器の楽団が集まり、新品の1979年型トランザム・ファイアバードと、クタクタになった1967年型クライスラー・インペリアルが棺のごとく持ち込まれる。インペリアルはクライスラー・ビル(→ wiki)とともに、『クレマスター3』に登場した。本作第3幕にもさりげなく映るクライスラー・ビルディングは、1930年に完成した自動車産業の栄華の象徴であり、アメリカのシンボルともいうべき超高層ビルだ。今は、所有権の75%をアラブ首長国連邦のファンドが握っている。
 ノーマン1世は、ショールームの地下に運ばれ、重機に潰されたそのインペリアルに乗り移る。

 『RIVER OF FUNDAMENT』(2)に続く。

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