映画『ノクターナル・アニマルズ』 

 チャチャタウン小倉にあるシネプレックスで、トム・フォード(→wiki)プロデュース/監督/脚本の新作映画『ノクターナル・アニマルズ』をみる。

 トム・フォードは『6歳のボクが大人になるまで』(→ブログ)のリチャード・リンクレイターと同じくテキサス州オースティン出身。ロサンゼルスのスノッブな現代アート界と広大なテキサスの闇を対照的に描いている。

 主人公のスーザンは、アート・ギャラリーのオーナー。展示会の初日を終えた彼女のもとに、小包が届く。送り主は長い間、連絡のなかった元夫のエドワード、小包の中身は彼が書いた小説だった。
 スーザンの夫はニューヨークで活動するビジネスマン。仕事一筋の妻に対して、愛が希薄になっている。週末なのに用があると言ってトンボ帰りした夫に不満と不安を覚えつつ、スーザンはエドワードの小説を読み始める。
 小説の舞台はテキサス州西部。主人公のトニーは妻と娘を車に乗せて夜のフリーウェイを南に下っている。目的地はメキシコとの国境に近いマーファ。人口2千人に満たない小さな町だが、現代アート・ファンなら、そこがドナルド・ジャッドのチナティ・ファンデーション(→wiki)のある町だと知っているに違いない。ファッション・フリークには『プラダ・マーファ』(→wiki:Prada Marfa)のほうが有名か。
 夜のテキサスほど恐ろしい土地はない。トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』の舞台はテキサスだった。しばらくして、前を走る2台の車に妨害される。不安がよぎる。娘にはケイタイがあるが、電波が届かない。周囲には目撃者になってくれそうな人も車もない……。



 映画は小説の進行とスーザンのLAでの現在、そして、小説家を目指すエドワードと過ごした若かりし日々が交錯する。二人はともにテキサス出身の幼馴染だった。 最初は車の後部座席に乗った娘が後のスーザンなのか、と想像を逞しくしたが、違う。

 主人公スーザンに扮するのは、『her/世界でひとつの彼女』(→ブログ)で主人公の女友達エイミーを演じたエイミー・アダムス。雰囲気が違うので、wikiを見るまで気づかなかったよ^^;。
 エドワードのほうは、ドゥニ・ヴィルヌーヴの『複製された男』(2013)やダン・ギルロイの『ナイトクローラー』(2014)で強い印象を残したジェイク・ギレンホール。こちらはすぐに気づいたw。

 オープニングを観て、ディヴィッド・リンチの普及版かな、と想像したが、そういうわけでもない。ただ、日本にどれだけいるか定かでないが、アメリカの現代アートやファッションの動向に関心ある人向きの映画だ。欧米では現代アート・ファンとファッション・フリークの重なる部分が日本に比べて遥かに大きい。日本のファッション・フリークの多くはアートにあまり関心がない。逆もしかり、かな?



 主人公がギャラリー・オーナーという設定もあり、映画には現代アート作品が多く登場する。
 プールサイドにはジェフ・クーンズの「バルーン・ドッグ」。ダイニングルームにはスターリング・ルビーの作品、寝室にはマーク・ブラッドフォードの絵画やアレクサンダー・カルダーの彫刻―23 Snowflakes(1956)。ほかにも、ジュリアン・シュナーベルやジョアン・ミッチェルの絵画、ロバート・ポリドリの写真。ミュージアムのロビーにはダミアン・ハーストのSaint Sebastian, Exquisite Pain (2007)。もっともこちらは一発でそれらが判るようマニアではない^^;。CREATORS.VICE:Everything We Know About the Art in 'Nocturnal Animals'をみただけに過ぎない^^;。

 キネマ旬報11月下旬号に載っていた美術監督のシェーン・バレンティーノへのインタビューによれば、映画全体の雰囲気をあらわすリチャード・ミズラック(→wiki:Richard_Misrach)の1984年の写真――Desert Fire #153 (Man with Rifle)――は、トム・フォード自身の所有物だという。 ミズラックは昔、カリフォリニアに1年いた頃、ちょうど「デザート・カントス」が書店に積まれていて、彼の写真に惹かれてソルトン・シーまでドライブしたことがある。

 オープニング・ビデオとインスターレーションは、映画のためにオリジナルにつくられたもの。衣装デザインは、マドンナの衣装などで知られるアリアンヌ・フィリップス。

【追記】2017/11/27
 DVDでトム・フォード監督の前作『シングルマン』を視聴したが、美しいもの、希少なものに惹かれる心性を翻弄するようなところがあって、なかなか好かった。
 ソ連との全面核戦争の不安を抱えたキューバ危機下のロサンゼルスが舞台。ゲイでもペドでもない者さえ魅了する、生きた彫刻としての人体。優れたマイノリティに対して覚える脅威(恐怖)の問題。マイノリティと希少性。恐怖を孕んだ美。
 本作でヴェネツィア映画祭主演男優賞を受賞したコリン・ファースは、『マジック・イン・ムーンライト』(→ブログ)の主役を果たし、『アイ・イン・ザ・スカイ』(→ブログ)の製作者でもある。
『ノクターナル・アニマルズ』は、欧米の現代アート市場で好まれるある種の傾向に対する批判性やエンタメ性への配慮はあるが、 どちらかというと『シングルマン』の方が好きかな。

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