映画『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』 

 YCAMで映画『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』を観る。原題Olafur Eliasson : Space is Process/2009年/デンマーク/77分。監督はヘンリク・ルンデ。公式サイトはこちら

 これはよくできた現代アート入門映画だ。

 エリアソン本人がこの上なくやさしく現代アート鑑賞の基本を教えてくれる。

 たとえば、なにも物が置かれていない、白光するスクリーンを観客に見せた後、彼自身が現れて、なにも映ってなければ、それが空間なのか、ただの白いスクリーンなのかさえ判別できないことを示す。そして、空間を知覚する際には時間が不可欠だと言う。あるいは補色残像を体験させて、光と色の相対性について解説する。

 今の中学・高校の美術の授業がどうなっているか良く知らないが、授業のひとつにこの映画を見せてもいいのではないかと思うほど。日本公開がこれだけ遅れた理由はなんだろう? エリアソンの知名度が低かったというだけのことだろうか。今回の国内上映は、エリアソンが参加した横浜トリエンナーレ2017に連動している。

「世界のある姿を疑え」「リアリティは構築されるもの」「形式と内容を問い続けよ」「アートは世界を変える手段のひとつ。人は世界を変えることができる」「現実は見る者の見方で決まる」「責任を伴う批評を」などなど名言がほとばしる。

 つねに理由を深く考える人に特有の「理屈っぽさ」が漂うが、そうした印象をあらかじめフォローするかのように、ニューヨーク訪問時のフォトグラファーとの行き違いのエピソードを差し挟む。エリアソン曰く「ごめんよ、気難しいこと言って」。

 現代の日本で最もエリアソンに近い人と言えば坂口恭平だろうか(最近はよく知らないが)。両人には「全身アーティスト」的なおもむきがある。

 ↓のTEDプレゼンテーションで、彼の言葉の魅力に触れることができる。


 彼は2008年に、NYイースト・リバー河岸の4か所に巨大な人工の滝を設けるパブリック・アート・プロジェクトをおこなった(→ wiki:ニューヨーク・シティ・ウォーターフォールズ)。

 エリアソンはコペンハーゲン生まれのアイスランド/デンマーク人。アイスランドはグリーンランドの南東方、北極圏のすぐ南に位置する人口34万人の小さな島国だ(面積は韓国と同じくらい)。メキシコ湾から流れてくる暖流・北大西洋海流の影響で、高緯度(北緯63~66度)にしては比較的温かい。ビョークの出身地としても知られるが、この国の名物は氷河と滝だ。

 今気づいたが、アイスランドとデンマークの国旗はともにスカンディナヴィア十字で、アイスランド国旗が青地に赤と白、デンマーク国旗は逆に赤地に青と白、と逆になっている。いわゆる「補色」ではないが、ちょっと面白い。

 アイスランドと言えば、どうしても映画『インサイド・ジョブ 』(→wiki)を思い出してしまう。

 アメリカのサブプライムローン問題に端を発した世界金融危機は、ちょうどエリアソンのニューヨークにおけるプロジェクトの期間中に発生した。NYダウ平均株価は2008年9月末から、まさにエリアソンが手掛けた人工滝の水のように急降下したのだ。金融資産のリアリティもまた、見る者の見方で決まる。

 スタジオBではYCAMインターラボの「The Other in Me」展が開かれている。ヴァーチャルリアリティは、知覚研究の集大成だ。映画の合間にちょっとだけ体験してみたが、なかなか面白かった。球体の力触覚提示は意味がわからなかったが。来年またあらためて来よう。

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