映画『エンドレス・ポエトリー』(2) 

   映画『エンドレス・ポエットリー』(1)からの続き。

 しかし――。そんなことは大した問題ではない。

 なぜならホドロフススキーの映画は、世界を変えるサイコ・マジックだからだ。

 頭で観てはいけない。心で触れるべきだ。

 今回、撮影監督を務めるのは、ウォン・カーウェイやガス・ヴァン・サント、ジム・ジャームッシュらと組んだクリストファー・ドイル(→wiki)。
 彼のカメラに撮られたステラの造形は素晴らしい。グレート・カブキめいた真っ赤な長髪、青い隈取り、片脚にはレインボーカラーのペイントを施し、2リットル入るビールジョッキを煽って、ふてぶてしい態度で男たちを罵倒する。扮するのは前作同様、アレハンドロの"歌う"母親サラを演じるパメラ・フローレス。典型的なエディプス三角形で、無邪気なまでにフロイト的。

 衣装デザインを手掛け、色彩設計を手伝ったのは、奥様のパスカル・モンタンドン=ホドロフスキー。1972年生まれってことは、ホドロフスキーより45歳年下だ。彼女は本作で500着もの衣装を作ったらしい。

 今回はパンフレットも充実。アップリンク代表の浅井隆が、製作過程で大きな役割を果たしていたことがわかる。彼は寺山修司主宰の劇団・天井桟敷で舞台監督を務めた人。ホドロフスキー同様、サーカスとフリークスを愛した寺山修司は、『エル・トポ』を絶賛していた。



 ホドロフスキーへのインタビューでは、彼がブニュエルとダリの映画『アンダルシアの犬』によってアートに対する概念が変わったと述べている。ガルシア=ロルカとダリ、ブニュエルは青春時代を共にした仲だった。ロルカはフランコ政権に殺され、ダリは渡米して裕福な成功した美術家となり、ブニュエルはイデオロギーの違いでダリと決別したが、シュルレアリスム映画の第一人者として一生を終えた。ほかにも、ラテン文学者の野谷文昭(→wiki)による「ステラ・ディアス・バリンと〈1950年代の世代〉」、ダーレン・アロノフスキー監督によるインタビュー、妻パスカルのデザイン画、さらには、映画の中に登場するいくつかの詩的な言葉が載っている。

 映画の最後で、パリへの旅立ちを決意するアレハンドロは、埠頭ですがりつく父ハイメと最後の格闘をおこなう。彼は「なにも与えないことですべてをくれた」として父を許す。
 この言葉は、ホドロフスキーの詩『終油の秘跡』の一部をなしている。無神論者だったはずの父ハイメは、亡くなる前にカトリックに改宗したのだろうか。それとも、ホドロフスキーのサイコ・マジックという「新たなカトリシズム」の住民となったのか。

 ホドロフスキーへのインタビューによると、前作『リアリティのダンス』から続くシリーズは、「全部で5部作にしたい」という。さらに、サイコ・マジックのドキュメンタリーや『エル・トポの息子』を撮りたいと答えている。現在、彼は89歳だ!

 マノエル・ド・オリヴェイラ監督みたいに105歳まで映画を撮り続けた例もあるから、不可能ではないかもしれないが、映画作りには大金が必要だ。

 日本はいまバブルの真っ只中にいる。

 最後に前作『リアリティのダンス』の冒頭で、ホドロフスキーが口にする言葉を紹介しておこう。

「お金は血なり。循環すれば活力になる。お金はキリストなり。分かちあえば祝福される」

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