映画『クレマスター4』 

 クレマスター3(2)からの続き。

 クレマスター4(35mm/42分/ドルビーSR)は1994年に制作された。

 舞台はグレートブリテン島とアイルランド島に囲まれた、アイリッシュ海の中央に浮かぶマン島(→wiki)。 クレマスター3の冒頭に表されるジャイアンツコーズウェイから約250キロ南東に位置するマン島は、「TT(ツーリスト・トロフィー)レース」と呼ばれるオートバイの公道レースで知られるが、ヨーロッパの古層、巨石文化とケルト人の伝説に彩られた島でもある。



 海に突き出した埠頭は、ラムジーのクイーンズ・ピア。つまり、男島の女王桟橋だ。埠頭の先に立つ白い建物のなかで、赤毛のロフタン羊が上下白のスーツをまとい、身支度を整えている。サテュロスめいたロフタン羊に扮するのは、マシュー・バーニー本人。

 路上では、サイドカーレースが始まろうとしている。車体の色はクレマスター・シリーズ全体の基調をなすイエロー系とブルー系。マン島の枯草に覆われた大地の色と、海や空の色の対照。

 カウルには、フィールドエンブレムと奇妙な三脚巴。三脚巴はケルト人が用いた太陽を象徴する紋章で、マン島の旗にも描かれている。遠く離れた地中海に浮かぶシチリアの旗にも三脚巴がしるされている。ケルト人の文化はかつて、ヨーロッパ全体に広がっていたのだ。ブログ:クレマスター3でも述べたように、ケルト人の宗教観には輪廻転生の思想がある。三脚巴もまた、輪廻転生のシンボルだ。最初に製作された本編で、すでに、サイクル――回転する車輪―三脚巴―輪廻転生のシンボリックな連関が示されている。

 爆音とともに、2台のサイドカーは逆方向にスタートを切る。上昇と下降。未来への前進と、起源への遡行。

 身支度を整えたロフタン羊は、鏡の前でタップダンスを踊る。そこに妖精たちが近づき、彼のポケットに半透明の玉を忍び込ませる。すると、ロフタン羊の足もとに穴が開き、彼は埠頭の下の海面へと落下する。海中に空いた別の穴に吸い込まれたロフタン羊は、球状の浮遊物が漂う、産道めいたぬめぬめしたトンネルを這い進んでいく。胎内くぐりの果てには……。

 クレマスター3におけるフリーメイソンのイニシエーションが、ここではロフタン羊のイニシエーション儀式に転じる。

 クレマスター5に続く。

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