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映画『クレマスター3』(2) 

 映画『クレマスター3』(1)からの続き。

 クレマスター3 第2部の舞台は、マンハッタン・セントラルパークの正面に立つグッゲンハイム美術館(→wiki)。逆円錐形の建物で、通称ビッグ・スネイル。
 観客はいったんエレベータで最上階まで上り、巨大な吹き抜け空間のまわりを螺旋状にめぐらせたギャラリーを鑑賞しながら下っていく。

 設計者は帝国ホテルの設計で知られるフランク・ロイド・ライト。彼は(たぶん)フリーメイソンではない。ライトは若い頃、シカゴにあるルイス・サリヴァン事務所に所属し、シカゴ万博(1893)で平等院鳳凰堂を目にして以来、日本建築に影響を受けた。狂騒の20年代には、自動車の大衆化でアメリカに草の根の平等主義が実現すると予想し、1928年に「ユーソニア」という言葉を造った。1925年のゴードン・ストロング・プラネタリウム計画案では、ドーム状のプラネタリウムの周囲に自動車の斜路を二重螺旋状に廻らせてみせた。グッゲンハイムの印象的な螺旋状の動線は、この計画案がベースとなっている。

 螺旋や渦巻は自動車の回転する車輪を連想させるが、ヨーロッパの古層、ケルト文化でも、渦巻文様が数多くみられる。ドルイド教では、死は終わりでなく「新たなる生への入り口」だと考えられた。これは霊魂の不滅、輪廻転生の教えだ。螺旋や渦巻は輪廻をあらわしている。



 映画では、マシュー・バーニー扮する見習い職人が、壁面をよじ登っていく。各階には脚線美を露わにしたコーラスガールや、義足のエミー・マランス、ロックバンドらがいて彼にからんでいく。まき散らされるワックス。豹女に変身するエミー・マランス……。最上階にはリチャード・セラ(→wiki:Richard Serra)が待ち構えている。

 コーラスガールの脚線を強調するダンスは、脚だけで踊るアイリッシュ・ダンスを想わせる。いっぽう、エミー・マランスは義足だ。脚部への強いまなざしはクレマスター1から引き継がれている。

 第1部のクライスラービルが男性性の象徴だとすれば、グッゲンハイムは女性性のシンボルだ。映画ではホワイエに設けられたプールの水に、真珠めいた球体を無数に浮かべ、バーニーが裸体の女性たちと戯れる様子が映し出される。フランク・ロイド・ライトは亡くなる直前、グッゲンハイム美術館の女性器めいた形状のプールについて、以下のように書いている。

「この建物の詳細部分について特徴的なのは、その象徴的な形状で、楕円形の種子の形の中には、球状の単位が包まれている。」(ケネス・フランプトン『現代建築史』)

 クライスラー・ビルの直線とグッゲンハイムの渦巻は一セットとしてクレマスター2の舞台、グレートソルトレイクに築かれたロバート・スミッソンのスパイラル・ジェッティ(→wiki:Spiral Jetty)を想起させる。スミッソンはスパイラル・ジェッティ完成から3年後の1973年に、飛行機事故で亡くなった。

 マシュー・バーニーの映像はいわば、大地に築かれた一種のランド・アートのようだ。

 クレマスター4に続く。

 
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