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映画『ジャクソン・ハイツへようこそ』 

 YCAMスタジオCで、フレデリック・ワイズマンの『ニューヨーク、ジャクソン・ハイツへようこそ』(原題:In Jackson Heights/2015/190分)を観る。

 舞台は『ニューヨーク ジャンクヤード』(→ブログ)の舞台、ヴィレッツ・ポイントにもほど近いニューヨーク・クイーンズ地区のジャクソン・ハイツ(→wiki: Jackson Heights, Queens)。

 190分は長いが、ワン・ビンの『苦い銭』(→ブログ)の163分よりはキツクなかったw。世界各地の多彩な文化風物を数多く映すなど、注意散漫な観客にも、退屈させない工夫をしているからだろう。ワイズマンは映画に「劇伴」を使わないのが特徴だが、ライブ演奏のグループを映すことで、自然に聴覚的な快を取り入れている。

 登場する人物の多くは、違法・合法はともかく、中南米やインド、中東から移ってきた人びとだ。ジャクソン・ハイツ(人口約11万人)のエスノ分布は、wikiによると多い順にヒスパニック56.5%、アジア22%、白人17.2%、アフロ・アメリカン2.0%、ネイティブ・アメリカン0.1%。



 多くの場合、声を出して主張する個人を映しているが、あくまでも強調しているのはコミュニティだ。コインランドリーやタトゥーショップも登場するが、おもに映るのはゲイ・コミュニティ、ユダヤ教徒、イスラム教徒の学校、インド系が集う理髪店、シティ・カフェ、移民自律支援センターなど。個人主義的な自動車よりも、公共交通機関である地下鉄7号線が強調されている。

 自分の妹が決死の思いで砂漠を渡ってメキシコからテキサスに移ってきた話をとうとうとしゃべり続ける女性。『エル・マール、ラ・マール』(→wiki)の記憶が頭をよぎる。

『ニューヨーク ジャンクヤード』では、最後の場面で、誰もいなくなったストリートを映すことで、BID(経済発展特区)への異議が暗に表現されていたが、ワイズマンの本作品では、さらに踏み込んで、弱者の視点から具体的なプロセスを浮き彫りにしている。再開発がどんどん進んでいる欧米や日本にとっては現実的な問題だ。
 とはいえ、暴力的な地上げ屋が跋扈した日本のバブル時代に比べると、遥かに[マイルド/手が込んでいて]、真綿で首を絞めるようなところがある。

 BID(経済発展特区)について書くと、言葉の選択によって、「保守」か「リベラル」かの踏み絵を迫られることになりそうで^^;、なかなかツライところだがw、基本的に地域住民(地権者)が担うタウン・マネジメント手法だ。市街地の活性化や、まちの美観の維持・発展を、市がカネを出して行うのでなく、「受益者である」住民(といっても多くは地権者)が組織した委員会が会員から集めたカネを費用として、話し合って決める、というもの(アバウトすぎるかな?)。
 地権者と一言でいっても、裕福でない地権者もいれば、地域の中小の不動産屋、全国的な大手不動産会社もいる。いろいろな口実でいつのまにか負担金が高くなり、地価が高くなると、固定資産税も高くなる。そうすると、地権者はテナント代や家賃を上げざるを得なくなる。映画では、古いショッピングモールからテナントが逃げ出していく話も語られる。
 かくしてストリートからは小さな個人商店がなくなり、大手のチェーン店ばかりが入居するクリーンなショッピングモールが立つという次第。

 まあ、基本的に土地が国家のもので、「強制移住」という概念さえないものとされる21世紀の覇者?、中国では全く問題視されないことだ(とここで、ぐぐぐっと保守にとどまることにしようかw)。

 映画では、コップウォッチという、スマホのカメラ機能で不法滞在者を守るべく警官を監視する活動も紹介される。

 いわゆる「リベラル」にとっては実に共感できる映画だが、いっぽうで、治安維持に従事する現在の警察や自衛隊に敬意を払う人びと、アベノミクスやトランプの経済政策を高く評価する人びと、ショッピングモール・ラヴァーたちには、あまり気分のいい映画ではないかもしれない。

 あと、ワイズマンは、カトリックのヒスパニック系に親近感を抱く一方、イスラムに対しては、あまり好い印象を持ってないようにも感じられた。エスノ人口比に従ってフェアに映しているようにもみえるが、ハラール用の七面鳥?をさばく残酷な場面が出てくるし、ヒスパニックの少年に対し、「英語がヘタクソ!」と怒鳴るイスラム系の経営するピザ屋の話が挿入される。

 アジア系はもっぱらインド・ネパール・中東系が登場し、中国・韓国・日系は(エスノ人口比を反映して?)全くといっていいほど登場しない。

 とまあ、いろいろ言ってみたが、ワイズマンは1930年生まれの89歳。『エンドレス・ポエットリー』のホドロフスキーより1歳年下。『チチカット・フォーリーズ』(1967)に始まって50年以上もドキュメンタリー映画を作り続けている。2017年には図書館を舞台にした『Ex Libris』、2018年にはまちドキュメンタリー、『Monrovia, Indiana』を撮った。これからもずっと撮り続けて欲しい。

 文中敬称略。

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